京都企業の血脈#14Photo:Bloomberg/gettyimages

日本を代表する高収益部品企業、村田製作所の勢いが止まらない。創業家の村田恒夫会長からバトンを引き継いだ中島規巨社長が、過去最高益の更新を続けている。米アップルのiPhoneに生産計画の浮き沈みがあっても、それに躍らされないビジネスモデルを確立しているのが村田の強みだ。特集『京都企業の血脈』(全18回)の#14では、値下げ圧力の熾烈な電子部品業界にあって「営業利益率20%」を稼ぐ村田の「本当の強み」を徹底解明する。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

世界市場を牛耳る「黒子企業」
究極の内製化と価格競争力が強み

 福井県越前市にある福井村田製作所。ここに「積層セラミックコンデンサー(MLCC)」の製造工場がある。製造されているのは、村田製作所が圧倒的な世界シェアを握る世界最小のコンデンサーだ。「0201(0.25×0.125ミリメートル)」と呼ばれ、サイズはゴマ粒より小さい。米アップルのiPhoneなど最新スマートフォンに欠かせない電子部品だ。

 もう一つ、村田の将来を担う重要拠点がある。それが、出雲村田製作所(島根県・出雲市)だ。ここでは、主に「0402(0.4×0.2ミリメートル)」という小さなサイズのMLCCを中心に、主に自動車用の製品を量産している。この二つが、MLCCの国内生産を担う2大拠点だ。

 一方、八日市事業所(滋賀県東近江市)では、セラミック原料を生成。この原料が福井や島根などの後工程工場に運ばれて、セラミックシートの積層、カット、焼成、メッキ加工など何段階もの工程を経てMLCCが完成する。

 つまり、原料加工から最終工程までの全てを自前で完結し、装置までも内製している。この究極の「ブラックボックス化」こそ、村田が誇る最大の強みだ。そこには「他社が真似できない技術」(村田恒夫会長)が凝縮されている。

 もはや村田のMLCCがなければ世界中のスマホや自動車生産に支障を来してしまう。世界のサプライチェーンに“チョークポイント”として組み込まれていること。この世界企業の黒子としてのポジションが製品価格の下落を抑制し、驚異的な利益率をたたき出す源泉となっている。

 だが、これだけでは世界を圧倒する競争力を維持できるわけではない。次ページでは、村田の本当の強さを実現させている、「驚くべきビジネスモデル」を解明していこう。