国内製造業の停滞が鮮明になる中、京都のものづくり企業が、“グローバルニッチ企業”として世界市場を席巻している。それでは、株式市場は京都企業の独自性をどのように評価しているのか。京都に本拠を置く京都企業を対象に「時価総額ランキング67社」を作成した。特集『京都企業の血脈』(全18回)の#12では、そのランキング結果を大公開する。任天堂や“京都御三家”とされる村田製作所、日本電産、京セラは何位に入ったのか。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)
日本電産「外国人投資家」が見切り?
前社長の解任後も株価が下落
「永守最強神話」に陰りが見えている。今年4月に日本電産の永守重信会長がCEO(最高経営責任者)に復帰しても、9月に関潤前社長を“解任”し永守氏が名実ともに実権を握っても、株価の下落が一向に収まらないのだ。
ここで日本電産の株価の動きをさらっておこう。
2020年3月末、関氏が社長に就任した直前に、日本電産は株式分割を実施している。その後、株価はボトムの6200円台からほぼ10カ月連続で上昇し、2月半ばに1万5000円の大台を突破。上場来高値を更新した。だがそれ以降、株価は一進一退を繰り返しつつも全体の下落基調は止まらなかった。
そして来る9月2日、関氏が辞任した。辞任理由について公式リリースには「業績悪化の責任をとるため」と記されたが、事実は永守氏による解任だった(辞任の経緯については、本特集の#2『スクープ!日本電産“社長解任”全真相【前編】、永守会長が関氏に突き付けた「2通の通知書」の中身』参照)。
問題は、永守氏が100%トップの座に舞い戻っても、株価が下がり続けたことだ。9月30日終値時点の株価は8130円となり、ピーク時の45.8%減、ほぼ半減まで落ち込んだ。
かねて永守氏は、株価下落の理由を業績悪化のせいであると事あるごとに言い続けてきた。とりわけ関氏が担当した車載事業の目標未達を問題視してきたのだ。
ある日本電産OBはこの永守氏の考えを否定し、「20年4月以降の株価急騰はEV向け駆動モーター『電動アクスル(モーター、インバーター、減速機が一体となったEV部品)』の成長への期待感によるもの。明らかにオーバーバリューだったのだ」と打ち明ける。22年3月期は売上高、営業利益、当期純利益で過去最高を更新しても株価は上がらなかった。同OBは「株価低調は業績が悪いからではなくて、電動アスクルの計画が背伸びし過ぎておりオーバーバリューが株式市場に見透かされているからだ」と続ける。
確かに、日本電産の株価が期待先行であった点は否めない。PER(株価収益率。株価が1株当たり利益の何倍か)は一時、40倍を超えており、株価が暴落した現在ですら28.3倍と高い。
それに加えて、いよいよ投資家の間にも「永守氏のサクセッションプラン(後継者育成計画)の破たん」を問題視する向きが出てきているようだ。日本電産の外国人株主比率は33.1%に上るが、日本電産幹部によれば「欧州の機関投資家の中には、関さんが退任したら株を売ると明言したプレーヤーもいた」という。
永守氏自身、外国人投資家の“心離れ”に気を揉んでいるようだ。関氏が辞任した直後の会見で、永守氏はこう締めくくった。
「株は、今が買いですよ。大底です。私と小部(博志社長)が必死になって業績の改善をする。前任者(関氏)が負の遺産を残しているのでね、一気にV字回復とはならないかもしれないが、必ず改善させる。外国の投資家に対しても、今日の私の話を正しく伝えてください」
それから1カ月、株価は下がり続けている。
グローバルニッチ企業の集合体となった京都企業。その中でも、日本電産は、グローバル市場で主役となれるポテンシャルを持つ筆頭格である。今回の解任劇が、日本電産の成長ストーリーに深い影を落としたことは間違いない。
次ページでは、京都府に本拠を置く上場企業67社を対象に時価総額ランキングをお届けする。同時に、予想PERとPBR(株価純資産倍率。株価が1株当たり純資産の何倍か)のデータも付記した。株式市場は、京都企業が持つ「独自性」や「オーナー経営」についてどのように評価を下しているのだろうか。