日本電産の永守重信会長による指示・方針は絶対だ――。実力主義と信賞必罰を徹底していることで知られる日本電産。社員は自社の働き方や企業文化、永守氏の経営方針にどのような思いを持っているのだろうか。特集『京都企業の血脈』(全18回)の#15では、日本電産社員によるクチコミ情報を基に、「永守帝国」の実態をつまびらかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)
京都ものづくり企業“トップ5”でも際立つ
日本電産の「低年収」と「勤続年数の短さ」
社長の首すらすげ替えられる。上級管理職は土曜日も出勤する。業績が目標に未達だと日本電産社長の永守重信氏の怒号が飛んでくる――。日本電産での働き方には過酷なイメージが付きまとう。
だが実際には、永守氏と直接会話を交わすなどコンタクトを取れるのは一握りの幹部に限られる。怒号が飛んでくるのも、降格処分が下されるのも、その対象は基本的には役員だ。
それでは、日本電産に勤める一般社員の働き方はどのようなものなのだろうか。その平均像を探るために、京都に本拠を置くものづくり企業の「売上高トップ5」で従業員にかかわる基本データを比較してみた。その結果、2022年3月期時点の平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与は以下の通りになった。
社名:平均年齢/平均勤続年数/平均年間給与
●日本電産 :39.2歳/10.8年/645万円
●京セラ :40.5歳/16.4年/725万円
●村田製作所:40.1歳/14.3年/797万円
●任天堂 :39.8歳/14.2年/989万円
●オムロン :45.5歳/16.7年/850万円
オムロンを除く4社については、従業員数の平均年齢が40歳前後と並んでいる。その4社では、日本電産の平均勤続年数が10.8年と短く、平均年間給与は645万円と一番低い。少なくとも、京都ものづくり企業との比較においては、離職率が高く、年齢の割に年収が低いという結果になった。
では日本電産の社員は、自社の働き方や企業文化、経営者である永守氏に関してどのような思いを持っているのだろうか。次ページでは、就職・転職のためのジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork(オープンワーク)」のクチコミ情報から日本電産社員の本音を明らかにする。
以下が、そのクチコミ情報を抜粋した一例である。日本電産の社員が「組織体制・企業文化」についてどのような意見を持っているのかを記したものだ。
会長の指示・承認は絶対で幹部を含め誰も逆らえない。『すぐやる・必ずやる・できるまでやる』のスローガン通り、気合いと根性で課題を乗り越えようとする社風――。いかに本音が赤裸々に綴られているかがよく分かる。それでは、「永守帝国」の実態をつまびらかにしていこう。