日本だけではなく世界をも動かす“グローバルニッチ企業”の集合体となった京都財界。特集『京都企業の血脈』(全18回)の#13では、京都企業の地位をより盤石なものにするための「二つの仕掛け」の秘密を解き明かす。加えて近い将来、京都財界を悩ませることになる大問題についても取り上げる。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)
オムロン立石氏と京セラ稲盛氏の死去は
京都財界にとって「大きな損失」
京都財界は、その“扇の要”の役割を果たしてきた大物経営者2人を相次いで失った。
2020年4月に新型コロナウイルスの犠牲となったオムロン名誉顧問の立石義雄氏と、今年8月に死去した京セラ創業者の稲盛和夫氏である。
京都財界の“顔役”だった2人は、地元の人々にこよなく愛された。お茶屋が経営するバーに立ち寄れば、立石氏が独りグラスを傾ける姿を頻繁に見られた。ある書店経営者によれば「稲盛さんは書店にひょっこりと現れては、『(自身の)本を売ってくれてありがとう』と気さくに声をかけてきた」という。
2人に共通していたのは、自社の経営に執念を燃やしただけではなく、一線を退いてからも財界や京都の街全体の活性化に労を惜しまなかったことだ。詳しくは後述するが、この重鎮2人を失ったことは、京都財界にとって大きな損失以外の何物でもなかった。
いまや、日本だけではなく世界をも動かす「グローバルニッチ企業」の集合体となった京都財界。本特集でも繰り返し述べてきたように、京都企業には「日本市場にこだわらず世界市場を展望する」「人まねをしない」「本社機能を京都府以外に移さない」といった特徴のようなものがある。個性ある創業者が多く存在することから、他地域にないエッジの効いた企業群が京都に集積していった。
実は、京都企業をエッジの効いたグローバル・エクセレントカンパニーたらしめているのは、「二つの仕掛け」である。次ページでは、その仕掛けの秘密を解き明かしていこう。