京都企業の血脈#8Photo:Bloomberg/gettyimages

三菱UFJ銀行は常時、日本電産に20人程度の転籍者を送り出している。その数はダントツで、日本一多いという。本特集『京都企業の血脈』(全15回)の#8では、三菱UFJ銀行を含めたメガバンクが日本電産に大量の人材を送り込む裏事情を解明する。また、日本電産と金融機関との関係性を探るために、日本電産とグループ子会社10社の「取引先金融機関リスト」を作成。その極秘リストからは、日本電産が銀行を巧みに使いこなす実態が浮き彫りになった。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

 石を投げれば銀行マンに当たる
日本電産は銀行の“出張所”のようなもの

 三菱UFJ銀行と日本電産。両社はメインバンクと得意先企業という関係性を大きく超越した“特別な間柄”にある。

 三菱UFJ銀行関係者によれば、「うちの銀行から日本電産に、常時20人程度の再雇用者を転籍させている。一つの取引先企業へ送り込む人数は、多い場合でも5人程度。これだけの人数を一企業に送る例は他になく、日本電産の受け入れ人数は日本一だ」と打ち明ける。まるで、日本電産社内に三菱UFJ銀行の“出張所”が存在しているようなものだ。

 別のメガバンク関係者は「かつては、三菱UFJ銀行と同様で、三井住友銀行とみずほ銀行も転籍者の数をそろえていた。3メガバンクの合計で50〜60人を移籍させていた時期もあった」と振り返る。

 では現在はどの程度の人数がいるのだろうか。日本電産幹部によると「メガバンクに大手銀行などを合わせれば、人数はもっと多いのではないか。ただし、日本電産に定着する歩留まりが悪くなっているが…」という。

 いずれにせよ、日本電産社内で石を投げれば銀行マンに当たるという多さである。人数では三菱UFJ銀行の出身者に分があるが、日本電産における“歩留まり”や“昇格スピード”という意味では、三井住友銀行の出身者に軍配が上がるといえるかもしれない。

 専務執行役員の菱田正博氏と北尾宜久氏は三井住友銀行の出身。いずれも50代に日本電産に転じてから本社役員に上り詰めた。創業メンバーの小部博志社長に次いで永守氏の信任が厚く、いまや“子分”として認められる存在である。

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