日本電産・永守重信会長永守重信会長は車載事業の赤字を理由に関潤社長を“解任”した Photo:JIJI

日本電産の永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)が関潤社長兼最高執行責任者(COO)を退任に追い込んだ背景にあるのは、車載事業の四半期赤字にある。だが、皮肉にも関氏が去った直後にも車載事業の業績は急回復しそうだ。日本電産の命運を握る車載事業の行く末に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

売上高10兆円達成の鍵を握る
関氏主導の「車載事業」

  2030年度に売上高10兆円を目指している日本電産。まずは最初の関門が「25年度売上高4兆円」を達成するというもの。21年度の売上高を倍増させる野心的な計画だが、その実現の鍵を握っているのが、関潤社長が担当してきた車載事業である。

 車載事業は、①電気自動車(EV)向け駆動モーター「イーアクスル」事業、②それ以外の車載モーター関連事業――の二つで構成されている。先行投資がかさむイーアクスル事業の赤字を、それ以外の車載事業がカバーすることで黒字をどうにか保ってきた。

 だが、関氏が最高経営責任者(CEO)に就任した21年度以降に世界的な原材料高がイーアクスル事業を襲い、22年1~3月期の車載事業は赤字を計上した。22年4~6月期も原材料の高騰にイーアクスルの値上げが追い付かず、車載事業全体で2四半期連続の赤字を計上した。

 この赤字が関氏退任の直接的な引き金となった。だが皮肉にも、関氏が去った直後に車載事業の業績は回復しそうな情勢だ。次ページでは、車載事業が息を吹き返す「根本的理由」を解説する。