京都企業の血脈#17Photo by Fusako Asashima

京セラ創業者の稲盛和夫氏が死去し、日本電産では永守重信会長の後継者問題が浮上している。偉大な創業者を持つ京都企業が「代替わり」の節目を迎えている中、堀場製作所は創業家による世襲経営を進めている企業だ。特集『京都企業の血脈』の#17では、京都財界の“顔役”となった堀場厚会長に、「京都財界の人脈」や「世襲に対する考え方」について直球で聞いた。(ダイヤモンド編集部副編集 浅島亮子)

日本の大企業経営者は“近視眼”
京都は「目に見えないもの」を重視する

――京セラの稲盛和夫氏が死去し、日本電産で後継者問題が浮上しています。偉大な創業者を持つ京都企業が「代替わり」の節目を迎えています。

 私は43歳で若くして社長になりました。長く経営をしている立場として思うことは、企業が大きくなっていくにはトップの考え方、価値観を長く受け継いでいくことが大事だということです。米ゼネラル・エレクトリックだって、社長の就任期間が短くなってから経営がおかしなったじゃないですか。

 それから、経営者は「数字で見えないこと」「お金で買えないこと」をどう読むかが勝負だと思っています。京都には、何か“目に見えないもの”を重視する考え方があるんです。白黒付けずにグレーゾーン、曖昧さを大事にする文化と言い換えられるでしょうか。

 世の中は合理的な判断の積み重ねだけで成り立っているわけではありません。現実は、常に予測不可能な要素が入り込みます。

 日本の優秀なトップって、ビジネススクールで勉強したことを教科書通りにやってはりますよね。数字化できるところを追っている。しかも四半期ベースで。四半期ベースの成績だけ見ても、5年も10年も先の将来なんて見えるはすがないんです。それを近視眼って言います(笑)。

――お言葉を返すようですが、日本電産の永守(重信・会長)さんは四半期決算を重要視されているように見えますが……。それは近視眼ではないんでしょうか。

 永守さんはね、一般の大衆向けに説明する時は数字を使いますから、近視眼的に見える。でも、あの人は違います。本当は、マーケット全体を見てはるんですよ。誰もまねできないような、広くて深い視野で将来が見えている。

 あんまりこういう言い方したくないんやけど、天才肌なんですよ。稲盛さんもそういうところがあったしね。でも、オムロンの立石(義雄・元社長。故人)さんはちょっとタイプが違ったと思います。ご自身を前面に出されない、奥行きのある経営者でした。

――上の世代の経営者とも交流があったんですね。最初に永守さんに面会されるときは苦労されたとか……。

 京都は、いろんな経営者に話を聞きたいといえばすぐに会える環境があるというのも特徴だと思いますね。

 最初、永守さんからは「2代目は大嫌い」と言われましてね。だから「ああ、そうですか。そやけどね、京セラよりも10メートル高く造った日本電産のビル見せてくださいよ」と冗談も交えて、でも真剣にお願いしたら、2世経営者の仲間で押しかけたんですが歓待してくれました。

 だからね、仲は悪くないですよ(笑)。

京都財界人の横の繋がりは、非常に緊密だ。世代交代が進み財界の“顔役”の存在になった堀場会長に、経営者の交流模様について聞いた。また、京セラ、村田製作所、日本電産といった京都の有力企業が「脱・創業者シフト」にかじを切る中、堀場製作所には後継者となることが確実視されている人物がいる。堀場会長の子息である堀場弾氏だ。堀場製作所では「世襲」を続けていくのか。直球で質問してみた。