日本電産が10月、新たな経営体制へ移行する。永守重信・会長兼最高経営責任者(CEO)は、三顧の礼で迎えた関潤・社長兼最高執行責任者(COO)を退任に追い込んだ。永守氏は、またしても後継候補を失うことになった。後任社長の小部博志副会長はリリーフ登板となる見込みで、真の後継者は主力幹部8人の中から選出される公算が大きくなっている。果たして最右翼候補は誰になりそうなのか。大胆に予想した。(ダイヤモンド編集部 村井令二、浅島亮子)
側近の小部新社長はリリーフ登板
永守氏の信任厚い「主力幹部8人」
「もはや時間の問題だった」(日本電産社員)――。10月、日本電産が新体制へ移行することが決まり、関潤・社長兼最高執行責任者(COO)が9月末に退任する。
永守重信・会長兼最高経営責任者(CEO)が関氏を罵倒する場面は至る所で見られており、退任の報が駆け巡った後も社内に驚きはない。
永守氏が、日産自動車のナンバー3だった関氏を三顧の礼で迎え入れたのは2020年4月のこと。21年6月、関氏にCEO職をいったん、譲ったところまでは、2人の蜜月は続いていた。だが翌年4月、関氏を降格させて永守氏自らがCEOに復帰した頃から、両者に隙間風が吹くようになった。
永守氏によると、関氏を降格させた理由は、業績悪化と株価だという。22年3月期は連結営業利益と連結当期純利益が過去最高を更新したが、関氏が担当する車載事業は原料高と中国のロックダウンの影響から22年1~3月期に赤字を計上した。
21年2月に1万5000円を上回って過去最高値を更新した株価は、22年4月には8000円台まで落ち込んだ。
永守「CEO」が復帰しても、業績と株価は回復せずに低迷を続けた。これを受けて永守氏は7月20日の記者会見で「車載関係は遅い。今から組織を代えて、人材を代えていく」と、隣席の関氏を公然と批判した。
日本電産の関係者によると、永守氏は関氏の降格とともに報酬を大幅に引き下げた。それでも関氏は社長として社内にとどまっていたが、「車載事業の投資方針を巡り、永守会長との溝は決定的なものになった」(同)という。永守氏は絶対君主なのだから、もはや関氏に社内の居場所はなかった。
当面の後任社長は、創業メンバーで永守氏の側近でもある小部博志副会長が就くが、小部氏は73歳であり、あくまでもリリーフ登板であることは明らかだ。永守氏は関氏に替わる「真の後継者」を社内から選出する見込みであり、主力幹部8人がその候補者となる。
次ページでは、その幹部8人のリストを明らかにすると共に、後継候補の「最右翼」を大胆に予想した。