自己効力感を高めるには
どうしたらよいのか

 心理学者のダンロスキーは、学業に関する自己効力感を取り上げた研究において、大学入学前の自己効力感が高いほど、大学1年目の学業成績の水準が高いことを確認している。そして、自己効力感の高い学生は効率よく学習を自己調整する可能性が高く、また高い目標を設定し、優れた成績を収めるように勉強法を調整し続けるだろうし、勉強時間も多く確保するだろうと言う。

 実際、数多くの研究が、こうした自己効力感と自己調整の結びつきを明らかにしている。では、自己効力感が高いか低いかは、どのように見分けるのだろうか。

 学業に関する自己効力感は、「良い成績を取るための勉強法を知っている」「勉強は得意な方だ」「授業中、きちんとノートを取ることができる」「宿題はちゃんとやるようにしている」などといった自信をもっているかどうかで見分ける。

 では、どうしたら自己効力感を高めることができるのか。心理学者のバンデューラは、自己効力感を高めるための方法を4つあげているが、ここではそのうちのモデリングと人からの説得の2つを取り上げることにしたい。

相手をマネする能力が強みに。
自己暗示も大切

榎本博明『勉強できる子は○○がすごい』(日経プレミア)榎本博明『勉強できる子は○○がすごい』(日経プレミアシリーズ)

 モデリングというのは、だれかの行動を観察して真似ることだが、この場合は、だれかがうまくいくのを観察することで、自分も同じようにできそうな気になることを指す。たとえば、身近な人物が忍耐強く努力するのを見ることで、自分にもできるという思いが湧いてくる。とくに子どもは自然に親の真似をするものだが、親が何かに忍耐強く取り組む姿勢を日常的に見ていることで、自分も同じように頑張れる気がしてくる。

 また、私たちは案外暗示にかかりやすいものである。「君ならできるはずだ」と言われると、何だかできるような気がしてくる。バンデューラも、ある行動を取るように勧められ、その行動を習得する能力があると言われた人は、困難にぶち当たっても、自分の能力不足についてくよくよ考えたりせずに、その行動に没頭し続けることができるという。

 そこで大切なのは、親自身が頑張る姿を日常的に見せたり、自己効力感を高めるような声がけをするように心がけたりすることである。