紳士服大手のコナカなど上場会社7社を監査クライアントに持っていた仁智監査法人が、今年12月に解散する方針であることがダイヤモンド編集部の取材で分かった。足下では監査法人への行政処分が増え、上場企業による監査法人の交代も相次いでいる。「資本市場の番人」である監査法人に今、一体何が起きているのか――。特集『会計士・税理士・社労士 経済3士業の豹変』(全19回)の#1で、その深層を探った。(ダイヤモンド編集部 片田江康男、重石岳史)
コナカは12月に監査人交代へ
2回目の行政処分が「致命傷」に
仁智監査法人は、東京・日本橋に事務所を構える中堅監査法人だ。2012年2月に設立され、21年9月末時点で公認会計士34人が在籍していた。
関係者によれば、仁智が監査を担っていたコナカは12月の定時株主総会までに新たな監査法人を決める予定という。残る6社も既に引き継ぎ先が決まっている。
仁智解散の引き金となったのが、今年5月、金融庁が下した行政処分だ。
仁智の監査法人としての実力は不十分だったと言わざるを得ない。例えば20年10月、仁智の顧客企業だった石垣食品の子会社で、費用を過小計上する不適切会計が発覚。仁智はそれを見抜くことができなかった。
こうしたことから金融庁は仁智に対し、新規の契約締結に関する業務の1年間停止と業務改善命令という極めて重い処分を出した。
仁智は15年12月にも業務改善命令を受けている。今回の再処分が“致命傷”となり、監査法人としての信頼は失墜、事務所を離れる会計士も相次いだという。
22年6月には日本公認会計士協会の「上場会社監査事務所名簿」からも抹消された。この時点で事実上、仁智の監査法人としての命運は尽きたといえる。
企業が作成した財務諸表が適正であるかどうかをチェックする監査法人は「資本市場の番人」と呼ばれ、信用で成り立つ商売だ。それが解散する影響は大きい。
だが、仁智の解散はほんの一例にすぎない。
監査業界では今、かつてない異変が起きている。その異変の真相を次ページから明らかにする。