各国がダイナミックなレギュレーション変更を仕掛けている。一方で、企業のコンプライアンス順守に対する世間の目は厳しくなるばかりだ。しかし日本の法務部は、“法務先進国”である米国と比べて「30年遅れている」といわれる。特集『弁護士 司法書士 社労士 序列激変』(全19回)の#17では、三菱UFJフィナンシャル・グループが投じた一手から、日本の法務部の“危機”と、その危機を打破するために必要な改革を読み解く。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
2018年に法曹界を震撼させた
三菱UFJのリクルート大作戦
「人を採用したい。候補者を出していただけませんか」――。
2018年、まだ残暑が続いていた頃のことだ。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)では、ある一つのポストを巡り、リクルート大作戦が展開されていた。
そのポストとは、法務部門のトップである。しかも、役員含みのだ。三菱UFJFGはここに外部から弁護士を迎えようと、五大法律事務所や外資大手はもちろん、良質な弁護士がいそうなあらゆる事務所に法務部のネットワークを駆使してアクセス。候補者の選定を願い出た。
法曹界には、緊張が走ったに違いない。メガバンクといえば、法曹界にとっては最大級の顧客である。その首位を走る三菱UFJFGの法務部門トップの椅子をライバル事務所に取られては、今後の取り引きに影響が出かねない。たとえポストを逃したとしても、三菱UFJFGの検討に足る候補を出せなければ、事務所の威信にも関わる。
なぜ、三菱UFJFGはこのような採用を行うことになったのか。背景をひもとくと、日本の法務部が抱える“危機”と、それを打破しようとようやく動き始めた日本企業の姿が浮き彫りになる。