高齢者向けシェアハウスに
入居する際の注意点

 共同生活が苦にならなければ、快適に過ごせるシェアハウスだが、重要な注意点があるという。

「高齢者向けシェアハウスは、自立している高齢者が対象なので“ついのすみか”になる可能性は低いです。入居しながら介護ヘルパーを利用する人もいますが、認知症を発症したり、要介護度がさらに高くなったりすれば、介護施設に移らなければならない場合も多いです。シェアハウスを視野に入れるときは、そうした健康面の入居条件も事前に確認する必要があります」

 介護サービスがないため、入居者同士が支え合いながら生活しているが、実際には高齢になるほどシェアハウスでの暮らしは難しくなる。そのため「入居するならなるべく早いほうがいい」と、満田氏。

「70代と80代とでは、いくら元気でも体力面で大きな差があります。70代前半で入居すれば、その分長い期間をシェアハウスで楽しく生活ができます。共同生活の醍醐味を味わうためにも、興味がある人には早めの入居をお勧めしたいです」

 シェアハウスの住人たちが、生き生きと生活している姿を見て、満田氏自身も老後の選択肢に高齢者向けシェアハウスを入れているという。そして、中高年層は両親と今後の住まいに関する話をする際に、シェアハウスの話題を出してみては、と満田氏は提案する。

「親と老後の話をするのは、家族だからこそ難しい面がありますよね。その点、高齢者向けシェアハウスは元気な人に向けた住まいなので、ポジティブな会話になりやすいんです。シェアハウスの話をしたときに、親が『自分には向いていない』と言えば、自宅で長く生活する方法を一緒に考えたり、サ高住や有料老人ホームなど、ほかの案を出したりしやすくなりますよ」

 うまくいけば“親のホンネ”を聞き出せるかもしれない。高齢者向けシェアハウスは、親子の会話のきっかけにもなるのだ。

「これまでは、高齢者の住まいの話題はネガティブなイメージもありました。でも、シェアハウスという選択肢が新たに加わって、老後の住まい選びを前向きに捉える人も増えています。今はまだ数が少ないですが、件数が増えればより多くの人が自分に合った家を選べるようになるはずです」

 多様化する高齢者向けの住まい。超高齢社会の到来とともに、一人ひとりがベストな住まいを選択できる時代が近づいているようだ。

<プロフィール>
満田将太:2007年に公認会計士試験に合格、同年あずさ監査法人に入社。主に代理店業、製造業、百貨店業、専門商社の会計監査・内部統制監査に従事。2012年に同法人を退社。自身の祖父母の介護に関わった経験から、介護福祉業界に携わることを決意し、株式会社えんカウントを設立。一般社団法人高齢者住まいアドバイザー協会代表理事も務める。