独特の趣を是と取るか非と取るか

 全体の雰囲気はたしかにレトロである。レトロというと聞こえがいいが、ところどころ古い感じがあり、あまり整然としていない。植え込みとフェンスで見えにくくなってはいるが、敷地外の道路を隔てた向かい側にはスナックや「休憩いくら」と書かれたホテルなどがある。
 
 こうした全ては“趣”である。欠点を美化して伝えるためにこの言葉を用いているわけでは決してない。大人から子どもまで、老若男女がおのおの楽しんできた歴史がそのエリア一帯に刻まれていて、それが趣となっている。

 趣を面白がれる人にとって花やしきは最高であろうが、完璧に洗練されたものを求める人や、「私には相応のコストがかけられるべき」と考えている人に花やしきは向かないかもしれない。

 実は筆者は、その日園内でスマホを落とした。絶望的な状況であり、ダメ元で、めいが持たされていたスマホから筆者のスマホに電話をかけるとつながった。インフォメーションセンターであり、どこかの神様が遺失物として届けてくれたらしかった。

 インフォメーションセンターで筆者にスマホを手渡ししてくれたスタッフの女性が、およそ接客マニュアルのにおいがしない、しかしプロ意識とホスピタリティーを感じさせる独特の雰囲気の女性だった。そこに花やしきの神髄を見た気がした。洗練がなくとも、真心がこもっていれば客は極上に心地が良いのである。

 なお、花やしきには全体的に古さはあるものの、新しさも積極的に導入されている。入り口近くにはSNS映えしそうなスポットがあり、今年9月には「マルハナ剣術道場」という新アトラクションがオープンしている。サンリオのキャラとコラボしてハロウィーンのイベントもやっているし、娘とめいが大盛り上がりしたのは女児たちに大人気の『すみっコぐらし』のわたあめと、古今東西の最新カプセルトイを集めたコーナーであった。