【リスクその3:たとえ介護などをしていても遺産をもらえない】

 同性パートナーの遺産は、相続対策をしていない限り基本的にすべて親族などの法定相続人に持っていかれてしまう。これは亡くなったパートナーを介護したり、療養看護したりしていたとしても変わらない。

 近年、無償で療養看護をしたり労務を提供したりして被相続人の財産の維持や増加に寄与した場合、相続人ではなくても寄与に応じた額の支払いを相続人に請求できる「特別の寄与」という制度ができた。しかしこれも「被相続人の親族」であることが条件となる。

 パートナーとして面倒を見てきたにもかかわらず、介護や普段の生活に一切ノータッチだった法定相続人に遺産がすべていってしまうというのは、心情的な負担も大きいだろう。

【リスクその4:公的な遺族補償が支給されない】

 公的な依頼で水防や医療従事などの活動をして命を落とした場合の遺族補償や、犯罪被害者の遺族に対する遺族給付金なども、同性パートナーには支給されないことが多い。

 2022年8月、犯罪被害者等給付金の遺族給付金が同性パートナーに支給されなかったことの是非を問う訴訟の控訴審判決が出た。同性カップルであることを理由に遺族給付金が支給されなかったのは違法だとして、名古屋市の男性が愛知県公安委員会の決定を取り消すよう求めた訴訟だ。原告の男性は、20年以上連れ添った同性パートナーを2014年に殺害されている。

 犯罪被害者等給付金の遺族給付金は「事実上婚姻関係と同様の事情にあった人を含む」と規定されているが、名古屋高等裁判所は1審に続いて原告の請求を棄却した。「長年同居しているのだから、婚姻関係ではなくても事実婚ではある」という理屈は、同性パートナーの場合は往々にして認められないのだ。