海洋石油掘削リグで働く十数人の労働者が、ジャンプスーツ、救命胴衣、ヘルメットを身に着け、海難事故に備えて義務付けられている救命講習会にやって来た。「死ぬことはないよ」。海洋リグの電子技師を務めるケント・コックスさん(56)は、緊張している初参加者を安心させようと、そう話しかけた。死にそうに思えるだけだ。一度に5人ずつヘリコプターの機体の実物大模型に乗り込み、体をハーネスで座席に固定する。そのまま屋内プールの約3メートル上につり上げられ、深く息を吸い込むと模型ごと水中に沈められる。水中では4点ハーネスで拘束されたまま7つ数え、数え終わったら一番近い窓から脱出する。自分でバックルを外し、窓の隙間から抜け出し、水面まで泳がなければならない。1度だけでなく、何度も繰り返し、徐々に間隔を短くしていく。最後はまるで溺死の疑似体験だったと参加者の一人は話す。