金利差拡大で円安を加速させる異次元緩和

 急速な円安進行の要因の一つとして、日銀の超金融緩和策による日米の金利差拡大がある。世界的に物価が高騰する中、物価上昇を抑えるため米欧の中央銀行は、追加利上げなどによって金融を引き締めている。

 それと対照的に、わが国では日銀が短期の金利をマイナス0.1%、長期金利の上限を0.25%に強くコントロールしている(=イールドカーブ・コントロール)。そのため、わが国と米国などの内外の金利差は拡大してきた。為替レートが一定であると仮定すれば、金利が低い円を売り、金利が高い米ドルを買ういわゆるキャリートレーディングによって、金利差による利得を増やすことができる。

 特に、8月下旬に米国で開催されたジャクソンホール会議のインパクトは大きかった。米国のFRB関係者は、「多少の痛みを伴ったとしても追加利上げなどを行う」と決意表明を行い、米国の金利にはより強い上昇圧力がかかり始めた。

 一方、日銀の黒田東彦総裁は、持続的に賃金と物価が上昇するまでイールドカーブ・コントロール(YCC)からなる異次元の金融緩和を継続すると明言した。日米の金融政策の違いは一段と鮮明化した。それは、ヘッジファンドなどの投機筋に、円キャリートレードをより積極的に仕掛ける安心感を与えた。

 その結果、円売りのオペレーションを行う主要投資家が増え、円安は勢いづいた。急速な円安を抑えるために、9月22日には財務省の指示に基づき日銀は円買い介入を行った。

 一方、米国政府は今のところ、ドル高に大きな懸念を示していない。そして、円買い介入の裏側で、日銀は長期国債の買いオペを実施して円資金の供給を続けている。これでは円安トレンドが反転するのは難しい。

 その結果、10月21日に一時、152円目前まで円が売られた。その直後に、財務省と日銀は為替介入を行ったとみられる。その後も、当局による円買い介入とおぼしき動きが見られた。