輸入小麦の価格据え置きだけでは
食料物価の抑制は期待できない

 今年9月の全国消費者物価指数は、昨年より3.0%上昇した。都市ガス代(25.5%)、電気代(21.5%)の上昇も大きいが、生鮮食品を除く食料も4.6%上昇している。10月の値上げ品目は、今年一番多かった。来年以降も、値上げは続いていくだろう。

 エネルギーだけでなく、食料の高騰もこれだけ顕著だが、政府の食料の物価抑制対策は、現状「輸入小麦の政府売り渡し価格の据え置き」だけである。従来通りだと、10月からの売り渡し価格は、4月より19.7%値上がりする予定だったが、10月からも4月と同じ売り渡し価格にしている。

 しかし、小麦関連製品の小売価格に占める原料小麦代金の割合は、農水省の試算によると、小麦粉ですら29%しかなく、食パンは8%、カップ麺は2%、うどん、中華麺は1%にしかすぎない。小麦以外の輸入原材料やエネルギー関連の値上げが続いている中で、輸入小麦の売り渡し価格据え置きだけでは、食料の物価を抑える効果はほとんどない。

 エンゲル係数が高い低所得者層にすれば、エネルギーだけでなく食料の物価高騰も大きな負担だ。11月にもかなりの品目が値上げされている。来年に値上げされる品目もすでに公表され始めている。

 エネルギーの高騰を抑制すれば食料の高騰も抑制できるということだろうが、それだけで食料の物価を抑えることはできない。限定された分野だけでなく、誰にも共通する食料の高騰対策にも本腰を入れてくれなければ、とても「政府が生活を守ってくれている」とは実感できないだろう。

 10月26日に開催された政府税制調査会では「消費税の税率を引き上げる」という意見が複数出たと報道された。総合経済対策が発表されることをわかっていて、消費税を引き上げろというのだ。たとえ2~3年先の話だとしても、結局、国民は多額の税金バラマキ、しかも偏ったバラマキの尻拭いをさせられるのだろう。

 物価高騰対策の後に消費税増税が待っているのなら、とても「生活を支えてくれる(生活を守ってくれる)対策」とは実感できない。