有事には危険を顧みない
自衛隊員の初任給の低さ

 まずは下の写真を見ていただきたい。

 これは令和3年度入隊の自衛隊員(改定前)の2士の給料明細だ。支給年月日が令和3年5月18日、号俸は1級から数字が大きくなると支給額が上がる。この自衛隊員の号俸は「9」、つまり、すでに9段階上がった俸給の支給金額である。その手取り額が14万4103円ということだ。この金額は自衛官候補生の最後の給料でではなく、正規に任官した直前の自衛隊員の給与額だ。

 自衛隊員の給料は令和4年度の採用要項によると、(高卒)自衛官候補生14万2100円、一般曹候補生17万9200円(高卒)だ。

 この給与額を見て、「高卒の給与ならその程度が普通。自衛隊員の給料は特に安いとは思わない」という人がいる。

 実際、令和元年調査をもって終了した厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査(初任給)」で地域別の初任給を見ると、最高額の東京の高卒初任給が17万8100円、最低額の沖縄が14万5200円。平均的な高卒の初任給より少し高めな給料となっている。

 だが、考えてみてほしい。自衛官が必ず行う服務の宣誓には「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託に応えることを誓います」とある。果たしてこの給与で、危険な地域や戦場に出撃する意思を固めることができるだろうか。

 加えて、令和4年の給与改定で若年者の給与は増額したが、自衛隊員全体では退職金や若年給付金が削られ、中堅以降の昇給を低くしている。若年者の応募が増えるように若い隊員の給与を上げて、年配者を下げたにすぎず、自衛隊員全体の給料ベースの底上げではない。

 このように数字のマジックを使い、待遇を良くしたようにみせ、少額しか上げない国の姑息さにあきれてしまう。