残業や休日の手当が付かない
自衛隊員の過酷な労働環境

 自衛隊員の募集要項には勤務時間は午前8時15分~午後5時(勤務地により異なる)、週休2日制、祝日、年末年始・夏季特別休暇、年次有給休暇(年間24日)と書いている。だが、募集要項通りの勤務時間や休暇をもらって勤務する隊員もいるだろうが、そうでない職域も数多く存在する。

 海上自衛隊で働く艦艇勤務者は、一度出航すれば数週間から数カ月は母港に帰れない。航海中は当直を組み、24時間体制で保安や監視任務に当たっている。停泊中であっても艦に人が必ず待機してすぐに出航できるよう備えている。その結果、募集要項の勤務時間を大幅に超えての勤務内容になる。

 だが、自衛隊員は残業手当や休日手当が付かない。防衛省勤務の幹部は過酷な業務量で数カ月家に帰ることもできない場合があるらしい。「市ヶ谷プリズナー」と揶揄(やゆ)する言葉があるくらいだ。タイムカードすらない職場では勤務時間記録も取れない。労働基準法で守られていない特別国家公務員にはその過酷な労働環境を訴え出ることも難しい。

 こうした現状ゆえに、自衛隊員の定員割れが続くのも当然だろう。

 そして、定員割れで空いた穴を長時間労働や休日返上で補う悪循環に自衛隊は陥っている。せっかく定着した三曹以上の自衛隊員の途中退職が、近年増えているという。法改正により4月にさかのぼって数千円程度の値上げ、12月のボーナスも0.05月分の増額が予定されているが、その程度では焼け石に水だ。