米国の大手企業は自社株買いを好み、政界はそれと同じくらい自社株買いを嫌っている。今年は株主還元策として米国企業に人気の自社株買いが過去最高となり、その上、買い入れ額が大台に乗る――聖人ぶった政治家に中指を突き立てるに等しい――はずだった。ゴールドマン・サックスなどはS&P500種株価指数を構成する企業の自社株買いが1兆ドル(約140兆円)を超えると予想していた。第1四半期の買い入れ額は2810億ドルに達し、出だしは好調だったが、その後、議会が決意を固め、ネットベースの自社株買いへの課税が盛り込まれたインフレ抑制法が夏に成立した。税率は1%で課税は来年1月から始まる。多くの法律がそうであるように、この新税も裏目に出て、自社株買いを抑制するどころか急増を助長するように思われた。しかしさまざまな理由で今年は自社株買いが1兆ドルに達することはおそらくないだろう。
「自社株買いの当たり年」予想、外れた訳は
出だしは好調も勢い鈍る、新税による「企業の強欲」の抑制も短命か
有料会員限定
あなたにおすすめ