スピード感を持って改革を進める上で、製造現場とIT技術をつなぐ“通訳”を担う“ブリッジエンジニア”を配置。「現場の困り事を聞きつつ、稼働率計導入や工程検査電子化などIoTの取り組みからスタートしました」(樋口氏)。20年には各部門で管理しているデータと生産設備から自動取得したデータを集積し、全部門のデータ共有を実現する社内プラットフォームを構築。帳票類も電子化し、生産データを活用した品質・生産性向上につなげる。
さらに、生産工程に関わる材料や金型、作業者のスキルなどの属性を照合し、設備が稼働可否を自律的に判断するシステムを開発。人の属性の管理は、独自のeラーニングのプログラムを構成し、受講状況やテストの合否によってスキルマップに登録。照合システムと連携し、作業に対応する教育を受けた作業者以外は設備を稼働できない。安全作業の担保と不具合ロスの削減につながっている。
製品にQRコードを付与し
トレーサビリティーを実現
●株式会社樋口製作所 事業内容/金属プレス加工、従業員数/グループ 528人、売上高/グループ 94億円(2021年度)、所在地/岐阜県各務原市金属団地44、電話/058-383-1141、URL/hig-jp.net、ヒグトレ:higuchi-tt.jp
その他、プレス製品1個単位にシリアルコードを付与し、使用材料や生産情報をたどれるトレーサビリティーや、熟練エンジニアの知見をシステム化し、若手の業務をサポートするAI技術伝承も仕組み化。自社の製図現場改善で培ったIT技術をサービス化し、他業種へのサービス・システム導入実績も増えつつある。
DXの成果として、不具合損失の減少や作業効率・生産性向上に加え、樋口氏は「全社的に定量的なデータを基に業務改善や新規事業の開発に取り組む風土が醸成されたことは大きいですね」と語り、本業のプレス技術と金属製品、IT技術の掛け合わせで、「お客さまの困り事にグローバルでお応えできるよう、さらなる進化を目指します」と意気込む。
リソースに限界がある中堅・中小企業でもDXは自前で実現できる。そのモデルケースとして、ぜひ参考にしたい。
(「しんきん経営情報」2023年1月号掲載、協力/岐阜信用金庫)