外部の力を借りることなく、すべて自前でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進。「2021年版ものづくり白書」に先進的事例として紹介され、2022年にはDXに取り組む中堅・中小企業のモデルケースとして経済産業省が選ぶ「DXセレクション」(全国16社)にも選定。先端的なDXの取り組みで注目を集めているのが、岐阜県各務原市の樋口製作所だ。(取材・文/大沢玲子)
同社は1937年、工作機械の設計・製造からスタート。「金属プレス専門メーカーとして、創業以来、こだわってきた深絞り技術を追究し、新素材のプレス加工、新工法の開発など、新しい価値創造に注力してきました」。3代目・代表取締役社長の樋口徳室氏はそう語る。
深絞りでは穴直径の62倍という業界最深級の加工を手がけ、高張力鋼板や非鉄金属、炭素繊維など加工が難しい素材にも対応。設計から金型製作、量産まで行う社内一貫生産により、コストを抑えつつ高品質の製品作りを実践している。
現場とIT技術をつなぐ
ブリッジエンジニアが活躍
03年、現社長に交代してからは、グローバル展開を加速化。「米国、中国、メキシコに生産拠点を置き、日本と同じ設備体制で世界中のお客さまに製品を提供しています」(樋口氏)。近年では深絞り技術の進化により、軽量化や接合工程レスによるカーボンニュートラルにも貢献。顧客企業も自動車・工作機械メーカーを核に30社超に拡大している。
時代の変化に合わせ挑戦し続けてきた同社が次に照準を合わせたのが、工場のオートメーション化を進める中でのDXの推進だった。システムインテグレーターとの協業も浮上するが、現場を熟知している自社で取り組むのがベストと判断。「デザイン性は後回しで、かっこ悪くてもいいから自分たちでやろうと呼びかけ、18年、4人でDXのプロジェクトチームを立ち上げました」と振り返る。