携帯電話事業の巨額赤字で資金繰りに窮した楽天グループは、虎の子の金融グループ解体の引き金を引いたのか?楽天傘下の楽天証券に19.99%を出資したみずほフィナンシャルグループ(FG)は虎視眈々と「楽天経済圏」を自陣に引き寄せる絵を描く。特集『楽天 解体の序章』(全6回)の#4では、楽天の“大義なき”金融子会社の上場計画と、そのおこぼれを虎視眈々と狙うみずほFGの隠し切れない野心に迫る。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
楽天証券の口座数が急拡大したが
足元見るみずほFG、虎の子の行方は?
2024年から、少額投資非課税制度(NISA)が拡充される。現在120万円の非課税投資枠が240万円に増え、「つみたてNISA」の投資枠も40万円から120万円に増える。これはとりわけ、インターネット証券への強い追い風になるとみられている。
証券口座数は、22年9月末時点でSBI証券が918万(グループ会社含む)、楽天証券が835万。2社とも19年まで400万~500万程度だったが急増し、今や野村證券など大手対面証券を凌駕するネット証券業界の2強だ。
ネット証券で口座を開くのは、比較的初心者や若年層が多い。19年の「老後2000万円問題」以降、老後不安による若年層の投資への関心が急速に高まった。若年層の資産形成を主な目的としたNISAが拡充されれば、より多くの顧客を集めることになりそうだ。
そんな楽天証券を傘下に持つ楽天証券ホールディングス(HD)が、楽天銀行と共に上場する計画だ。楽天グループの携帯電話事業による大赤字を受けた“金策”以外の何物でもないが、そこに目を付けたのがみずほフィナンシャルグループ(FG)である。
みずほFGは楽天証券に、傘下のみずほ証券を通じて19.99%に当たる800億円を出資。みずほ証券の顧客の高齢化を受け、楽天証券を通じて若年層の投資家を取り込む狙いがあるが、それだけではない。楽天ポイントで形成される「楽天経済圏」を引き寄せる大胆な野望が見え隠れする。
そして金策に追われる楽天グループは、証券の上場計画のため組織を再編したが、これはポイントの恩恵を特に受けてきた楽天証券のビジネスを揺るがしかねない。
みずほFGに足元を見透かされた瀕死の楽天グループは果たして、“虎の子”をみずほFGに売り渡し、手塩にかけて育ててきた金融グループ解体のトリガーを引いてしまうのだろうか?