JAと郵政 昭和巨大組織の病根#5Photo:JIJI

日本郵政は楽天グループを物流事業のテコ入れやデジタルトランスフォーメーション(DX)のパートナーとして選び、1500億円を出資した。だが、両社の提携には暗雲が垂れ込めている。楽天の携帯電話事業やインターネット販売の宅配などにおいて、日本郵政の力を最大限に引き出す協力体制を築けていないのだ。特集『JAと郵政 昭和巨大組織の病根』(全15回)の#5では、両社の提携のちぐはぐさを明らかにする。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

4677億円の損失を出した大失敗
豪物流会社トール買収の“二の舞い”に

 日本郵政グループは旧郵政省が母体となっているだけあって、その組織風土は「減点主義」の官僚機構に近い。だがその半面、数年に1度、トップダウンで電撃的に大型提携に乗り出す“癖”がある。

“癖”とネガティブな書き方をしたのは、すでに一度、巨額損失を出す失敗をやらかしているからだ。2015年に、6200億円を投じた豪物流会社トール・ホールディングスの買収がそれである。

 海外での物流事業の知見がない日本郵政はトールの経営陣をグリップできず、収益を改善できなかった。結果的に、16年度に特別損失4003億円を、21年度に同674億円を計上するに至った。

 失敗の主因は、買収当時、日本郵政社長の座にあった西室泰三氏(元東芝会長)が十分な資産評価などをせずに巨額買収に突き進んだことだった。

 そして今、トール買収の“二の舞い”になりかねない巨額損失リスク案件が日本郵政で進んでいる。楽天グループとの資本提携のことだ。

 次ページでは、日本郵政に迫る750億円の減損危機の内実と、「中途半端」といわれる楽天との協力関係を明らかにする。