楽天 解体の序章#3Photo:Diamond

楽天グループの携帯電話子会社の楽天モバイルが、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの通信大手3社と大立ち回りを演じた「プラチナバンド」の獲得交渉に出口が見えてきた。既存3社が電波の一部を楽天に割譲するという「楽天寄り」の総務省報告から一転、ドコモが解決策に動いたのだ。これにより、楽天のプラチナバンド獲得が一気に現実味を帯びたが、楽天には、その先に立ちはだかる難題がある。特集『楽天 解体の序章』(全6回)の#3では、念願の電波獲得劇を巡る楽天の誤算に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

楽天プラチナバンド奪取へ
「基地局削減」でコスト効率化なるか

 プラチナバンドの活用方針は、「基地局数削減」「コスト効率化」――。

 携帯電話がつながりやすいとされる周波数帯「プラチナバンド」。楽天が、その獲得を狙う理由はシンプルだ。同社が2022年8月30日に総務省の有識者会議に提出した資料に明確に記載されている。

 楽天の基地局整備は22年10月末時点でようやく人口カバー率98%に到達したが、いまだKDDIに回線を借りるローミングに頼っている地域は多い。このKDDIのローミング費用の負担は重く、楽天の巨額赤字の最大の要因となってきた。

 KDDIのローミングから脱却するには一刻も早く自前の基地局での全国カバーを実現しなければならない。それでも楽天が現在、4G(第4世代移動通信システム)ネットワークで唯一保有する1.7ギガヘルツ(GHz)帯はプラチナバンドより電波が飛びにくく、基地局を隅々まで整備するのはコスト高になってしまう。そこで楽天は、より効率的にエリアを広げられるプラチナバンドが必須というわけだ。

 楽天がプラチナバンドを獲得するには、二つの案がある。一つが、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの既存通信事業者3社が保有するプラチナバンドの帯域の一部を、既存3社のコスト負担で譲り受ける「楽天寄り」の総務省案だ。

 もう一つが、現在使われていないプラチナバンドの帯域の一部を割り当てるという案で、業界最大手のドコモが提案しているものだ。

「空き」があるなら、既存3社の電波を奪うより、楽天にとって電波確保のハードルは下がる。ここにきて楽天のプラチナバンド獲得は、一気に現実味を帯びてきた。だが、この悲願が、コスト削減を優先したい楽天の思惑通りに実現するか。次ページでは、順調に進んだかに見える楽天のプラチナバンド獲得交渉が、実は“誤算続き”だった経緯をつまびらかにするとともに、今後の難題に迫る。