『メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた』を推してくれた人を訪ね、その理由を聞くインタビュー。まず最初に話を聞いたのは、この本を日本一売っている、三省堂名古屋本店の大屋恵子さんです。(聞き手:書籍オンライン編集部、写真:三省堂名古屋本店提供)

「マスクだからメイクはいいや」と思っていた

――今回の本は、いわゆる“大物著者”の本などではありません。にもかかわらず、大屋さんが勤務されている三省堂名古屋本店さんでは、初回から大きめに展開していただいていました。仕入れてくださった決め手はなんでしょうか?

三省堂名古屋本店 大屋恵子さん(以下、大屋):ズバリ、タイトルです! 発売前に新刊案内を見たとき、一読者として、『メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた』っていうタイトルがめちゃくちゃ刺さりまして……。タイトルだけで、即座に(中身を見る前に!)追加の注文をしたのを覚えています。

 この本の内容はまさに、私自身が自分のメイクに対してずーっと「無意識に」思っていたことだったんですよ。毎日メイクはするけれど、「なんか、テレビに出てる人と自分違うよなあ、うーんどこが違うんだろう、まあいいか」っていう感じ。あと、「なんとなく変」っていう表現も好きでした。本当は「明らかに変」なのかもしれないけど、読む側に優しい感じがして……。

――大屋さんご自身の悩みに合う本だったんですね。書店員さんとして普段メイクするときは、どんなことに気を付けていらっしゃるのですか?

大屋:お恥ずかしい話なんですが、マスク生活になってから、眉毛を描くくらいしかできていません……。

 書店員は本当に体力勝負です。たとえば、デパートの(地下)2Fに届いた段ボールを、お店のある8階までスタッフ2~3人で運ぶ仕事があります。1日だいたい200~300箱あるので、終わったらへとへとです。メイクどころじゃないんです(笑)。

 こんなレベルなので、そもそも私のようなレベルの人に合う「メイク本」「美容本」はこれまで存在していなかったんですよね。

お店のスタッフさん作! オリジナルポップで売上激増

――展開するとき、お店オリジナルの手描きポップを作っていただいていました。

大屋:はい。お店に、絵を描くのが上手なスタッフがいるんです。

 元々はコミックのポップを描いてもらっていたんですが、実用書でも効果がありそうだから試してみたいと思って。「ちょっと前のメイクと、今のメイク」っていうテーマで比べて描いてほしいと伝えたら、力作ができあがりました。

――効果はありましたか?

大屋:はい。最初は「実用書」のエンド台(まあまあ目立つ棚)に置いていたのですが、企画棚(入口近くの一等地、売れ筋商品などが並ぶ)に移動して展開したところ、売上が倍くらいに伸びました。ポップを「人の顔と同じくらい」巨大にしたのもよかったのかもしれません。等身大のものを見ると、お客様は「おっ」となるみたいです。

 本のコンセプトが「OKメイク!/NGメイク!」と切り捨てるのではなくて、読み手に優しいなと感じていたので、ポップでも「新しい自分を発見できます」と前向きなコピーを使いました。

メインターゲットの30代~40代女性「以外」に、若い人が買っていく

――店頭では、どんな方が買ってくれていますか?

大屋:メインは30代~40代の女性です。お仕事帰りの方、土日に家族でいらっしゃる方、名古屋の大ターミナル駅なので、旅行者の方もいます。あと、私も意外だったのですが、10代後半~20代の若い女性のお客様も買ってくれています。

――若い方も!

大屋:おそらく、マンガなので手にとるハードルが低いんだと思います。

「このタイトルは売れる!」メイクが苦手な書店員が仕掛けた大ヒット店舗はタカシマヤ ゲートタワーモール内にあり、女性客が多い。
拡大画像表示

 店頭を見ていても、パラパラっと開いて中身を読んで、その後ためらわずにレジに来てくださることが多いですね。今、小説などでも1500円を超えてしまう本は買い控えられる感じがしますが、この本は、ギリギリ1485円。いい意味で「衝動買い」されていると感じます。

「マスク取る?」のあいまいな今こそ手元に置きたい本

――まだ読んでいない方に向けて、どんな点がおすすめポイントですか?

大屋:年末年始は人と会う機会が増える時期。当然、マスクをつけたり外したりする機会が多くなると思います。でも、マスク生活に慣れすぎて、「いまさらマスクを取るのが怖くなってきちゃったなあ」という人にこそ、この本がおすすめです。

 読むと、びっくりするくらい「メイクへのモチベーション」が上がるんですよ! とにかく行動したくなるんですよね。私は読み終わったあと、すぐにKATEの眉毛パウダーを買いに走りました(笑)。

「このタイトルは売れる!」メイクが苦手な書店員が仕掛けた大ヒット大屋恵子(おおや・けいこ)
三省堂書店名古屋本店 係長
1982年、三重生まれ。三省堂書店名古屋本店 趣味生活・人文書担当。本との出会いは「一期一会」。お客様にも自分自身にも多くの本と縁を結ぶべく本屋で働く日々です。現在勤めている三省堂書店名古屋本店はとても広くテーマパークのような本屋。みなさまに楽しんでもらえるようたくさんの出会いのあるフェアや、イベントを行ってますので、ぜひご来店くださいませ!【twitter:@naghon_sanseido