2021年、東京医科歯科大学との統合計画を発表し話題を集めたのが東京工業大学だ。名門国立理系大学同士の巨大タッグを決断した背景にはどんな危機意識があったのか。さらなる国立大学の「合流」の可能性はあるのか。特集『総予測2023』の本稿では、東工大の益一哉学長にその疑問をぶつけた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 山本 輝)
新しい産業を生み出せない東工大
衰退危機を脱するための「統合」
――東京医科歯科大学との統合を発表しました。その背景は。
東京工業大学の設立の理念というのは、工業学校をつくって人を育てて、それが工業、工場をつくる、今風にいえば新しい産業をつくるというものだったんです。
なのに、この30年間、全然新しい産業をつくれていない。大学として何をやってきたの?っていう、はっきりいって危機感。これが一番、頭にあったわけです。
僕自身は半導体が専門で1980年前後から取り組んできたけれど、研究者としては、もう楽しませてもらったわけです。お金ももらえたし、やりたい研究もできた。
でも振り返ってみて、「俺は楽しんだだけか」という反省も強く感じた。自分たちが「技術偏重家」をつくってきたという反省もあるし、いまはサイバーやESGなど新たな潮流への対応も必要。
とにかくいま動かないと、次の30年も衰退するという危機感が根底にあるわけです。
次ページでは、東工大・医科歯科大連合へのさらなる「合流」の可能性や、話題を集めた総合型選抜などでの「女子枠」導入の背景について益学長が明かしてもらった。