総予測2023#94Photo by Hiroyuki Oya

「夢の計算機」の実現が少しずつ近づいている。海外勢が先行していた量子コンピューターの開発競争で、2023年はついに日本でも国産初号機が整備される予定だ。実際に社会で使われるようになるのはいつなのか。特集『総予測2023』の本稿では、量子コンピューター産業の未来を予測する。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

「週刊ダイヤモンド」2022年12月24日・31日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

2023年は量子コンピューター
国産初号機デビューの年

 2023年は日本の量子コンピューター産業の歴史に残る一年になるだろう。「国産初号機」がいよいよデビューするからだ。

 国産初号機の開発を進めているのは、理化学研究所の中村泰信・量子コンピュータ研究センター長らのチームだ。超伝導方式の64量子ビットのマシンで、大阪大学で開発中の量子コンピューター用のクラウドサービスを介し、計算を実行する環境を整備する。23年1~3月に完成予定だ。

「米IBMの日本デビューは派手だった。負けないように」

 国産初号機の開発が大詰めを迎えている理研には、こんな“要望”が寄せられているという。

 日本では既にIBMの27量子ビットの量子コンピューターが稼働を始めている。21年7月に神奈川県川崎市で開催されたお披露目の式典には大物が顔をそろえた。

 萩生田光一文部科学相(当時)や自由民主党量子技術推進議員連盟の林芳正会長、東京大学の藤井輝夫総長、慶應義塾大学の伊藤公平塾長、みずほフィナンシャルグループの佐藤康博会長(当時)、JSRの小柴満信名誉会長……。量子コンピューター推進の日本のキーマンたちがデビューを祝ったのだ。

 国産初号機の式典に誰が登壇するのか。その顔触れから、日本の量子産業に懸ける“本気度”が分かるだろう。

“夢の計算機”は何に使えるのか。使いこなすのはどの業界が先か。次ページでは、量子コンピューターの産業応用に積極的な業界と、実用化の時期の予測をお届けする。