総予測2023#92

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自由民主党とのズブズブの関係が問題になっている。本当に決別を果たせるのか。日本政治と宗教集団が抱える大問題とその根幹にあるものは何か。特集『総予測2023』の本稿では、宗教と政治の問題に詳しい社会学者の橋爪大三郎氏に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部論説委員 小栗正嗣)

「週刊ダイヤモンド」2022年12月24日・31日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

自民党に影響力のある宗教集団は三つ
創価学会、日本会議、旧統一教会

――政治と宗教とのあしき関係が続々と明らかになりました。

 自由民主党は、何としても政権を維持するように行動する。そのためには選挙に勝たないといけない。選挙に勝つことが至上命題になっている。

――選挙は民主主義の根幹です。

 日本人はその根幹の投票行動について問題を抱えています。

 日本人は、所属集団によって投票するのです。自分が属している集団に忠実であることを証明するために、皆で同じ候補に投票する。自分の考えで投票しない。民主主義は、個々人が良心に基づいて投票するのが大原則なのに、その第一歩から間違っているんです。

 日本のムラ(村)は、小さな集落から成っていますね。その集落ごとに支持する候補がいて、村会議員、町会議員といった地域代表になり、地域に影響力を持つ。そのもっと上に県会議員や国会議員が乗っかっている。

 都市部では、そうした居住地の代わりに企業があり、業界団体がある。労働組合や学校の同窓会などもある。そして宗教団体もある。

 こうしたさまざまな所属集団を寄せ集め、候補者の下に束ねられるか、後援会がしっかりしているかどうかが当選の鍵を握る。日本は明治時代からずっとこれでやってきたんです。

 かつての中選挙区制の下では、例えば定数4人なら20%の得票で当選できた。それが小選挙区制になると50%近く票を取らないといけない。

 こうなると、従来さほど相手にしなくてよかった集団がキャスチングボートを握ることになる。特に動員力のある宗教団体を無視できなくなる。だから小選挙区制になってから宗教団体の政治へのパワーが大きくなってしまった。

――世界平和統一家庭連合(旧統一教会)もその一つです。

 今、自民党に実際に影響力を与えている宗教集団は三つあります。

1 創価学会

 創価学会の人々は公明党に、あるいは公明党との選挙協力で自民党に投票します。かなり確実に票が上積みできる。自民党は当然、創価学会に足を向けて寝られない。

2 日本会議

 日本会議は、神社本庁などさまざまな保守的宗教団体の寄り合い所帯です。そうした団体を自民党に代わって、日本会議の事務局が世話役になって束ねている。一つ一つの団体は小さい。でも束になると無視できない。そこで事務局の力が強くなる。その事務局を、かつて生長の家の政治部門を担っていた人々が仕切っている。ブレーンとなって、安倍晋三元首相や自民党内に深く食い込んでいる。

次ページでは、宗教と政治の問題に詳しい橋爪氏が、旧統一教会が政治家を取り込もうとする、その狙いを解き明し、日本の政治と宗教集団が抱える大問題の根幹に切り込む。橋爪氏が提示する、日本の民主主義を生き返らせる処方箋とは何か。