これまで免税事業者だった人に突き付けられる「2023年10月以降どうするか問題」。だが、自分の業種や事業によって、実は取るべき手段が異なるのだ。あなたは免税事業者のままか、適格事業者になるか、どっちが正解なのか?特集『個人も企業も大混乱! インボイス&改正電帳法の落とし穴』(全15回)の#6では、シミュレーションも交えながら、さまざまな免税事業者のタイプ別に「最適解」を指南しよう。(税理士 吉澤 大)
免税事業者のインボイス対応への最適解とは?
インボイス制度で益税はなくなり消費税の自腹負担も
インボイス制度になると免税事業者は、売り上げの本体価格に消費税を上乗せしてもらうことが難しくなります。そして免税事業者は、消費税の申告義務がないので課税仕入れに伴い支払った消費税の還付を受けることができません。つまりインボイス制度になった途端、合法的に消費者の負担した消費税が免税事業者の手元に残る「益税」がなくなるだけでなく、課税仕入れに対する消費税を“自腹”で負担しなければならないのです。免税事業者にとってはまさに天国から地獄です。
中には「うちはそもそも消費税など上乗せして請求していない」という人もいるかもしれません。ですが、消費税の課税対象となる課税売り上げである以上、得意先は請求額には消費税額が含まれた税込み金額であると認識しています。
今までの請求額には消費税が含まれているとして仕入税額控除ができていたものが、インボイス制度になると消費税は控除できないとなれば、得意先から見ると本体価格が値上げされたのと同じです。得意先は自らの負担が大きくなるのですから、免税事業者に依頼せず同じ金額で消費税の控除が可能な適格請求書発行事業者(適格事業者)との取引を選択するかもしれません。それを避けるには、免税事業者は消費税相当額だけ値下げしなければならないでしょう。
もし、これまでと同様課税売り上げの本体価格に消費税額を上乗せした請求をしたいのであれば、課税事業者に登録して、今までは必要がなかった消費税の申告と納税の負担を背負わなければなりません。
つまり、インボイス制度とはどう転んでもこれまで免税事業者だった人にとっては手取りが減るという結果になってしまうのです。しかし、それを最大限に緩和する方法もあります。具体的に免税事業者の収入はどう減るのか、そしてどうやって対策すればいいのか、次ページからシミュレーションも加えて解説していきましょう。