個人も企業も大混乱! インボイス&改正電帳法の落とし穴 #10Photo by Akio Fujita

売上高1000万円以下の零細事業者が受け取る消費税は納税義務がなく、いわゆる「益税」とされるが、実はそうではなく商品の対価の一部であると、かつて東京地方裁判所は断じている。特集『個人も企業も大混乱! インボイス&改正電帳法の落とし穴』(全15回)の#10では、その理由について、消費税に詳しい元静岡大学教授で税理士の湖東京至氏に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)

益税つぶしと税の不平等をなくす
その裏に潜む狙いは何か?

 2023年10月1日から導入されるインボイス制度。売上高1000万円以下の個人事業主やフリーランスの人々が苦境に陥り、生活が脅かされるとして、与野党の政治家を巻き込んでの制度導入延期の声が強まっている。

 一方で、そうした動きに反論する声も少なくない。というのも、今回のインボイス導入の背景には、いわゆる「益税」をなくし、税の不平等をなくすという目的もあるからだ。

 この益税というのは、売上高1000万円以下の免税事業者であれば、売り上げに伴って受け取った消費税を納税しなくてもいいという免税制度のことだ。要は、消費者が支払った消費税の一部が、免税事業者の手元に残る仕組みだ。

 国の狙いとしては、益税をなくすことで税の不平等を正すだけでなく、税収増につなげる狙いがある。益税がなくなれば、2000億円を超える税収増になるとされ、しかも公平な税負担につながるのであればいいことずくめに思えるが、事はそう単純ではない。

 益税という言葉の裏には、「損税」という言葉もある。また、諸外国の事例を見れば、国がインボイスを導入する真の狙いは、また別にあるとの見方もできる。ほとんどの人が知らない消費税の正体について、消費税に詳しい元静岡大学教授で税理士の湖東京至(ことう・きょうじ)氏に次ページ以降で、解説してもらった。