貧国ニッポン 「弱い円」の呪縛#番外編Photo:FotografiaBasica/gettyimages

日本は「超・階級社会」への変貌を遂げつつある。それは、働き手個人の自助努力ではなく、出自や教育環境、就職時期の経済環境といったにより階級が定まる「日本版カースト」ともいえる理不尽な世界である。特集『貧国ニッポン「弱い円」の呪縛』の番外編では、コロナショック後に実施した4.4万人分の「階層最新データ」を初公開する。逆転不能社会へ突き進む日本の不都合な真実とは。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

東京・名古屋・京阪神エリア4.4万人の大規模調査!
最新階層データが突きつけた「超・階級社会」の闇

 1月5日の経済3団体の賀詞交歓会で、岸田文雄首相は産業界に向けてインフレ率を超える賃上げの実現を強く要請した。産業界の反応は割れているものの、人材をつなぎ留める防衛策の一環として賃上げに応じる企業経営者の姿が目立った。

 だが前向きな姿勢が見られたのも、集ったメンバーに日本有数の大企業トップが多く含まれていたからに他ならない。企業数の99.7%を占める中小企業の経営者が集結していたならば、全く別の反応を示していただろう。

 日本の働き手の賃金格差は解消されるどころか、拡大傾向が続いている。それくらい、働き手の賃金を上げる経営判断は難しいということだ。

 今の日本を「格差社会」などという生易しい言葉で表現するのは実態を表していない。格差社会よりもはるかにシビアな「超・階級社会」へと変容しつつあるのだ。

 それは、働き手個人の自助努力ではなく、出自や教育環境、就職時期の経済環境といったにより階級が定まる「日本版カースト」ともいえる理不尽な世界である。親から子へ、子から孫へ。階級格差は世代を超えて連鎖し、加速度的に広がってゆく。

 新型コロナウイルスの感染拡大は、階級格差を助長するには十分な威力を備えていた。それを裏付けるような驚愕の新事実が、橋本健二・早稲田大学人間科学学術院教授らが2022年に実施した「三大都市圏調査」により明らかになった。橋本教授は日本社会の階級構造を長きにわたって定点観測してきた、格差研究の第一人者である。

 ダイヤモンド編集部では、橋本教授の協力を得て、コロナショック前後で日本の階級構造がどう変化したのかを示した「階層調査の最新データ」を初公開する。調査対象は東京圏、名古屋圏、京阪神圏に居住地を持つ住民4.4万人で、学術調査としては極めて大規模なものだ。

 それによれば、「階級社会とコロナショック」の相関を裏付ける衝撃的な結果が導き出された。一億総転落のリスクが日増しに高まる超・階級社会。次ページでは、その残酷な実態を明らかにしていこう。