個人も企業も大混乱! インボイス&改正電帳法の落とし穴 #8Photo:fatido/gettyimages

インボイス制度は、これまで免税事業者だった業者のみならず、そういった業者と取引のある多くの課税事業者である企業にも影響がある。しかも、多くの場合でこうした買い手側の企業にも負担が発生することが多いのだ。特集『個人も企業も大混乱! インボイス&改正電帳法の落とし穴』(全15回)の#8では、意外と見落としがちな「インボイスを受け取る側の企業の対応」について見ていこう。(税理士 吉澤 大)

『2時間で丸わかり インボイスと消費税の基本を学ぶ』(かんき出版)から要旨を抜粋しています。

買い手もコスト増!?でも強硬交渉は独禁法違反に
ダメージ回避にはどうすればいいのか

2時間で丸わかり インボイスと消費税の基本を学ぶ『2時間で丸わかり インボイスと消費税の基本を学ぶ』(かんき出版)

 インボイス制度が開始されると、売り手が免税事業者のままでは、買い手である課税事業者が負担する消費税納税額が増えてしまうのです。それを理由に、売り手の免税事業者に対し、消費税分の値下げを要請する買い手が増えることも予想されます。

 買い手が売り手よりも優位な場合に、その地位を利用して正常な商習慣に照らして不利益を与える行為については、独占禁止法による「優越的地位の濫用」として禁止されています。

 インボイス制度の導入を理由に、免税事業者に対して消費税分の値下げを要請することは、この優越的地位の濫用には該当しないのでしょうか?

 2022年1月19日に公正取引委員会が公表したQ&Aでは、「このままの条件の取引では買い手の負担が増加することを理由に、免税事業者に対して取引条件見直しを行うことに問題はなく、双方納得の上で決まった金額であればよい」とされています。

 ただし、その協議が形式的なものであり、相手が今後の取引への影響を考えて条件をのまざるを得ないという背景がある中では、独禁法上「問題がある恐れがある」とされる場合があります(詳細は後述)。

 つまり、インボイス制度は、これまで免税事業者である小規模事業者だけの問題ではありません。そうした事業者と取引のある多くの企業にも、さまざまな面から影響が大きい制度なのです。具体的にはどんなものがあるのか。次ページで詳しく見ていきましょう。