相続&生前贈与 65年ぶり大改正#14Photo:PIXTA

生前贈与のルール改正時期が2024年に決まり、金融業界が沸いている。23年中の「駆け込み贈与」需要が見込めることに加え、富裕層や事業者向けの「相続時精算課税」制度の使い勝手が向上するからだ。両制度の利用を促すことは顧客資産に食い込む好機。特集『相続&生前贈与 65年ぶり大改正』(全14回)の最終回では、税制改正をビジネスチャンスとして狙う金融業界の動向を追った。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

顧客の高齢化に悩む大手証券会社
相続は起死回生のビジネスチャンス

「顧客の高齢化」――。

 国内の対面型の大手証券会社が近年指摘され続けている課題だ。将来の主力顧客となる若年層をインターネット証券会社に奪われ、将来ジリ貧となる恐れがある。

 とはいえ、日本の個人金融資産約2000兆円のうち6割が60代以上に集まるといわれる状況を反映し、彼らが高齢の富裕層という、ネット証券があまり持たない有力顧客を多く抱えているのは強みだ。

 そんな利に聡い証券会社は、複雑極まりない相続の制度変更などをきっかけに、ビジネスチャンスを拡大しようとしたたかに狙っている。

 大和証券は2021年1月、「暦年贈与改正対応チーム」を立ち上げた。税制改正に関連するオンラインのセミナーを開催すると、定員を超える応募があるなど大盛況だ。各社とも同様に相続や生前贈与などの専門知識を持つ人材を各地に配置し、顧客への情報提供が可能な体制を整えている。

 税理士とは異なり、証券会社自身が相続に関連する業務を直接担うわけではない。それでも、税制改正は顧客の懐により一段と深く入り込み、顧客の高齢化という課題の解消につながる起死回生の機会となり得る。

 一体どのように、チャンスへの扉が開かれるのか。税制改正をビジネスチャンスとして活用しようとする企業の動きを次ページでは読み解く。