提案側にぜひ考えていただきたいのが、それが「経営者や経営幹部が考える優先度の高い経営課題の解消に繋がっているか」です。「こちらの考え通りにやれば確実に会社がよくなるのに、そこまで汲み取る必要があるのか」という声も聞こえてきそうですが、決定権のある経営者と違うことを考えていたら、うまくいくのは至難の業。経営者も納得し、かつ会社全体の改善にもなると示しておけば、くすぶっていた部署間の摩擦解消や社員間の相互理解に繋がることもあります。共通の課題解決に向けて社内がまとまるチャンスを、DXがつくってくれるわけです。

DX運用に欠かせない2つの要素

 実際に、経営課題とリンクさせたことでDX推進計画が通った例があります。ある大手企業のDX担当は、DX推進計画の役員プレゼンに2カ月間毎週臨んだものの一向に通らずでした。そのときの私の問いかけが「それ、経営課題の解消に繋がっていますか」です。

 彼は非常に優秀で計画化の資料もわかりやすく、数字もその根拠もしっかりしていましたが、残念ながら経営課題の優先順位が高くないと思われるような提案をしてしまっていたのです。優先順位の高い課題の解決を先に資料に盛り込み、もともと計画していた内容を添えるような形に手直しして提案したところ、次の役員プレゼンであっさり承認が得られました。

 このように現場からの提案を通すには、経営者や経営幹部が課題に感じていることを提案書に入れたりひもづけたりすることが非常に大事と心得てください。

 DXをうまく進めて大きな成果を挙げるには「インセンティブの設定」と「経営課題とのリンク」が必要です。どんな企業でも、この2つは絶対に準備できます。

 DX人材がいないとかデジタルリテラシーが低いといった点に目がいきがちですが、それらは横においてでも、まずは社員と会社の現状に目を向け、この2つを考えてください。

 DXをうまく進めている会社の多くは、これができているのですから。

まずは“会社の課題”に目を向ける

 ここまでお読みくださった方は「インセンティブの設定と経営課題とのリンクができただけで、本当にうまくいくの?」とお思いでしょう。ここではDXでほぼ確実に直面する悩みに、どう対処できるようになるかをご説明します。