スポンサー離れに歯止めがかからないフジテレビ。1月17日に開かれた緊急の社長記者会見では、調査委員会を立ち上げることを発表したが、企業不祥事の調査に詳しい弁護士の目には、到底本気で調査を行う気がないと映っているようだ。“お手盛り”の調査が行われるようなら、東芝のケースと同様に、株主が選定した者による調査が行われる、混迷した状況に陥ることもあり得るだろう。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)
CM差し止めは75社に
それでも低い調査の本気度
国民的アイドルグループSMAPの元リーダーでタレントの中居正広氏と女性とのトラブルに、フジテレビ社員が関与していたとの週刊誌報道を受け、同社は1月17日に緊急で社長記者会見を開催。港浩一社長は、説明ができていなかったことについて謝罪し、第三者の弁護士を中心とした調査委員会を立ち上げることを発表した。
ところが、フジテレビは記者会見自体を全てのメディアに対して開かれた形で開催せず、記者からの質問に対しても「回答を控える」を連発するなど明確に答えることはなかった。
そんなフジテレビの閉鎖的で説明責任を軽視した姿勢に、日本生命保険やトヨタ自動車などが即座に広告出稿停止という形で反応。翌週になると同様の対応は産業界で一気に拡大し、足元ではCM差し止めを決めた企業は75社に達している。
フジテレビとしては、少しでも早く信頼回復を遂げ、停止された広告の再開を目指したいはずだ。だが、記者会見での港社長の発言からは、信頼回復のスタートラインに立つことすら難しそうだ。
信頼回復のためには、記者会見でも言及された調査委員会による真相・原因の究明、再発防止策の策定と対外的な公表が欠かせない。つまり、調査委員会のあり方が鍵を握るのだが、同社は現時点でどのような調査委員会を立ち上げるかを明確化していない。今回の問題に対して、本気で調査を行う姿勢は見られず、後ろ向きの姿勢がにじみ出ているといえる。
ただ、身内からの圧力も強まっている。フジテレビの親会社であるフジ・メディア・ホールディングスの社外取締役7人は、臨時取締役会の早期開催と第三者委員会の設置を申し入れた。
次ページでは、これまで不祥事を起こした企業で、調査委員会が真相究明の「隠れみの」に使われたケースを紹介するとともに、フジテレビが調査をめぐって、たどる可能性のある混迷した状況について解説する。