民主労総の幹部らが
秘密組織を構築した疑い

 前述の通り、スパイ防止当局は民主労総の元・現幹部4人の自宅と勤務地のソウル貞洞(チョンドン)にある民主労総本部事務室を家宅捜索した。また、京畿道水源(スウォン)、光州(クァンジュ)、全南(チョンナム)、済州(チェジュ)など全国10カ所ほどの事務室と住居、車両なども家宅捜索した。

 スパイ防止当局によると、民主労総幹部Aらは2016年から新型コロナ禍以前の19年まで海外において、北朝鮮労働党直属の対南スパイ工作機構である文化交流局の工作員の指令を受けた後、民主労総傘下の労働組合と地域本部に下部秘密組織を構築した疑い(国家保安法違反)を受けている。

 スパイ防止当局が注目しているのは、下記の3点だ。

(1)Aが北朝鮮から工作金を受け取ったり、不詳の内容物を取引した可能性。
(2)今回の民主労総事件が済州を基盤とする秘密組織の行動と似たパターンという点。総責任者と見られるAが数回にわたり海外で文化交流局所属の工作員と接触したと見ている。
(3)Aは北朝鮮と通信するために済州秘密組織のように北朝鮮文化交流局が開発した暗号プログラムなどで通信した疑い。

民主労総への家宅捜索に
一部の市民団体が反発

 民主労総の北朝鮮寄りの活動の一例として、韓国保守の論客で『月刊朝鮮』の元編集長、趙甲済(チョ・ガプチェ)氏は次のように紹介している。

 民主労総は昨年8月13日、韓国労働組合総連盟(韓国労総)、北朝鮮の朝鮮職業総連盟(職盟)が共同で開催した「8.15全国労働者大会(南北労働者決議大会)」で、米軍撤収、米韓同盟解体などを主張、連帯書と共同決議文を作成、朗読し、従北主義論議を提起した。

 共同決議文は、民主労総、韓国労総、北朝鮮職盟3団体名義の文書となっており、日付け表記などが北朝鮮方式になっている。前記のような内容と併せ、北朝鮮側が作成を指導したものと見られる。

 趙甲済氏は、長年北朝鮮の行動を見てきたジャーナリストであり、同氏によるこの大会が北朝鮮主導で行われたとの指摘は、韓国の市民団体が北朝鮮に牛耳られていることを物語っている。