2月1日〜8日まで
問題発言をめぐる経緯

 同性婚を巡る荒井元秘書官の発言と、その後の経緯をまとめる。

<2月1日>
 岸田首相が衆院予算委員会で同性婚の法制化について「極めて慎重に検討すべき課題だ」「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と発言。これが報道されると「差別肯定と同じ」「社会は変わるべきだ」といった批判が相次いだ。

<2月3日夜>
 荒井元秘書官が記者団の取材に対してオフレコを前提に「僕だって見るのも嫌だ」などと発言したことが報道された(※記者とのやり取り全文は後に記載)。報道後すぐに荒井元秘書官が「誤解を与えるような表現で大変申し訳ない。撤回する」と発表。「差別的な意識は持っていない」「首相に申し訳ない」と話したとも報道されている。

<2月4日>
 岸田首相が「荒井秘書官の発言は政権の方針とは全く相いれないものであり、言語道断」などとして、更迭を発表。

<2月6日>
 松野博一官房長官が国会で野党議員からの質問に答え、首相の「社会が変わってしまう」発言について、法務省が作成した答弁案にはなく、首相自ら加えた“アドリブ”であったことを認めた。茂木敏充幹事長ら自民党幹部が「LGBT理解増進法案」を前向きに進める方向で一致したと報道。同法案は2021年に超党派の議員連盟が成立に合意したが、自民党内に反発があり国会提出されなかった。

<2月7日>
 岸田首相が「LGBT理解増進法案」の国会提出に向けた準備を指示したと報道。稲田朋美議員らが意欲を見せているが、当事者からは「理解増進」ではなく「差別禁止を」の声もある。「LGBT理解増進法案」に否定的な考えを持つ自民党の西田昌司政調会長代理が記者団に対し「差別の禁止や法的な措置を強化すると、一見よさそうに見えても人権侵害など逆の問題が出てくる。社会が分断されないような形で党内議論をしていきたい」と発言したと報道。

<2月8日>
 岸田首相は国会で野党議員からの質問に対して、「社会が変わってしまう」発言について、「同性婚制度の導入は、国民生活の基本に関わる問題であり、国民一人ひとりの家族観とも密接に関わるものであり、その意味で全ての国民に幅広く関わる問題であるという認識のもとに『社会が変わる』と申し上げた。決してネガティブなことを言っているのではなく、もとより議論を否定しているものではない」と釈明。

 経緯をまとめると、いかに荒井元秘書官の発言が自民党内に激震を招いたかがわかる。一昨年にいったんやめたはずの「理解増進法案」を再び検討することとなったのだから。

 荒井元秘書官としては岸田首相の“アドリブ”発言が批判にさらされる中で、記者に対して岸田首相をかばうつもりでの発言だったのだろう。

 岸田首相がいくら「ネガティブなことを言っているのではなく」と釈明したところで、スピーチライターに登用していた秘書官がこのような差別認識を持っていた事実に、これまで全く気づいていなかったとは考えづらい。しかも荒井秘書官は「秘書官室は全員反対」とも発言したのである。