いつの時代も政治家の失言が人々の話題となるのは、普段の型通りの挨拶や初めから決められた形式的答弁ではなく、そこに彼らの確固たる本音が垣間見えるからだろう。建前や美辞麗句では見えない人間性が失言には表れる。(フリーライター 鎌田和歌)
死刑をめぐる軽率すぎる発言
2022年もあと2日を残す限りとなった。今年の記憶に残る失言を振り返ってみよう。
発言のインパクトからも、その後更迭となった波紋の大きさからも2022年最大の失言といって差し支えないのではないか。
葉梨氏は発言の翌日に謝罪、撤回。「私の本意ではない。今後は真意がしっかりと伝わるように発言に慎重を期してまいりたい」と述べたものの、過去にも会合やパーティーで同様の発言をしていたことが報じられた。
いわゆる「鉄板ネタ」だったことが判明してしまい、11日には辞表を提出。岸田文雄首相も同日に事実上の更迭に踏み切った。
日本はOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で唯一死刑制度があり、国際社会が死刑廃止に向かう中で存置論は根強い。2020年に発表された内閣府の世論調査でも、容認派が8割を超えている。
しかしそうであっても、国家が一人の個人を死に至らしめることについて抑制的であるべきなのは当然であり、ましてや軽口で語られてよいことではない。葉梨氏の発言は、「死刑のはんこ」をまるでラジオ体操のスタンプを押すかのごとくに感じさせるものであり、法務省トップが口にしてよいものではなかった。
日本維新の会の議員による失言も相次ぐ
「年齢が若く、顔で選んでくれれば1番を取るのは決まっている」(石井章参議院議員、5月15日に立候補予定者の事務所開きで発言)
どちらも日本維新の会の議員による、選挙応援での失言。
馬場議員は演説で立候補予定者の女性の名前を間違えて紹介し、「あまりにかわいいので……」発言。その後、記者団に「名前を間違えたからちょっとリップサービスしないと、と思いまして」「容姿を言った訳ではありませんから」と釈明。リップサービスとは、立候補予定者に対してさらに失礼ではないか。
石井議員は、応援に駆けつけた選挙区で立候補者6人中5人が女性であることに触れて、「年齢が若く、顔で選んでくれれば……」と発言。そんなに年齢の若さと顔で選んでほしいのであれば、男性議員もその基準にしてはどうか。
この2人の失言は、女性への言及や評価が年齢やルックスに偏ってしまう一部の男性の姿を今年もまざまざと見せつけた。