基軸通貨であるドルの下落が国際商品相場の上昇要因だとされることが多い。もちろん、それ以外の要因も各国際商品の相場を変動させる。例えば、2011年以降の各商品の相場動向(上のグラフ)を見ると、ドル相場よりも大きく影響した要因がある。

 原油は、リビア内戦やイラン核開発など地政学要因を背景に高止まりした。穀物は、12年夏場に北米の干ばつなどの影響で高騰し、現在、南米の収穫期に入りつつあるが、依然として、その影響が残っている。金は、欧州危機によりリスク回避的な投資対象として人気を集めた。銅は、欧州や中国の景気減速を受けた需要の伸び悩みを背景に上値が抑えられた。

 実際、過去の相場の推移を見ると、為替相場の変化率は国際商品に比べて小さい(下のグラフ参照)。国家破綻などによって通貨が信用力をなくす国などを除けば、通常は、中央銀行や政府が通貨の価値安定に努めていることへの信頼感が厚いことを反映している。

 しかし、景気や地政学問題など他要因に対する見方が安定してくると、為替相場の変動による商品相場への影響が相対的に重要になってくる。

 昨年終盤から、日本銀行の金融緩和観測が急速に強まって、円安が進み始めたことがサプライズになっている。今のところ、日本の景気回復テンポが速まって、工業原材料の需要が増えるという連想はあまり強まっていない。そうした意味で、円の下落が国際商品の相場に及ぼす影響は限定的というのが常識的な見方だ。

 しかし、海外勢の金相場のコメントでは、日銀の金融政策への言及が増えている。海外からは、日本人が運用資金の逃避先として金を選びそうなタイミングに見えるのだろう。