トランプ25%関税で自動車産業の賃金や利益は“1割減”、台数維持の「輸出価格引き下げ」戦略は正しいかPhoto:PIXTA

5月の対米自動車輸出額は24.7%減
輸出価格(円ベース)は24.9%減

 米トランプ政権は4月3日、自動車の輸入に対して25%の追加関税を発動した。日米関税見直し交渉で日本政府はこの自動車関税の撤廃・引き下げを最優先にしてきたが、トランプ大統領は6月29日、FOXニュースのインタビューで、自動車関税を修正するつもりはない考えを示唆した。

 7月7日(日本時間8日未明)、トランプ大統領は、相互関税の上乗せ関税の一時停止期間が9日に切れるのを前に、各国に新たな関税率を課すとして日本に対しては「25%」の新しい関税率を通告、8月1日から実施すると発表した。

 日本政府は猛反発し8月1日までに再度、交渉をする姿勢だが、日本車に課されている追加関税の撤廃や引き下げはかなり難しそうな状況だ。

 貿易統計によれば、5月のアメリカ向け自動車の輸出額は、対前年同月比24.7%減の3634億円となった。輸出台数は3.9%減の10.3万台だった。1台当たりの金額は約354万円で、前年同月に対して21.7%下落したと報じられている。

 円表示での輸出単価が下落したのは、為替レートの影響もある。しかし、それだけでなく、日本の自動車メーカーが輸出価格を引き下げたことによる面が大きいと考えられる。

 ドルベースの数字は、日本銀行が発表する企業物価指数で確かめられるが、それによると、北米向け乗用車の輸出価格は円ベースで24.9%の下落。契約通貨ベースで18.9%下落した。

 これは日本の自動車メーカーがアメリカでの販売台数維持のため関税引き上げ分は日本からの輸出価格を引き下げ、現地の販売価格に転嫁しない戦略を採ったためだと考えられる。

 だがこの戦略が正しかったのかどうかは、疑問だ。自動車関税だけでなく、相互関税もこれまで(24%)を上回る高率関税が課せられる懸念が強まる新たな状況で、自動車メーカーをはじめ日本企業は販売戦略の練り直しが必要だろう。