選ばれるクスリ#10Photo:Image Source/gettyimages

肥満に向けた薬が約30年ぶりに登場する。しかも2剤だ。一つは大正製薬が2月に承認を取得した市販薬の「アライ」。生活習慣病の治療などで肥満の患者に日々向き合っている医師たちが強い関心を寄せる“本命”はアライではなく、もう一方の薬。ただこの薬、実は不名誉なレッテルを貼られている。特集『選ばれるクスリ』(全36回)の#10では、不名誉なレッテルを貼られた“本命の薬”に対する医師のホンネ、薬としての本当の実力を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

大正製薬が「アライ」の承認取得
医師たちの“本命の薬”は別

 大衆薬大手の大正製薬は2月、内臓脂肪減少薬「アライ」(一般名:オルリスタット)について、処方箋がなくても薬局で買える市販薬(OTC医薬品)として製造販売する承認を国から取得した。

 この薬は、生活習慣の改善に取り組んでいるものの腹部が太めの大人(腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上)において、内臓脂肪および腹囲の減少に効果があるというもの。ざっくりと言えば、抗肥満薬である。

 昨秋に承認が了承されることが明らかになると、テレビの情報番組などでも取り上げられ、世間から非常に大きな注目を浴びた。肥満に悩む人がたくさんいることの表れである。

 アライはリパーゼ阻害薬というタイプの薬。このタイプは、消化管内で脂肪分解酵素のリパーゼの活性を阻害することにより、食事で取った脂質の体内吸収を抑制するとみられる。

 海外では医療用医薬品や市販薬として、昔から広く使われてきた。日本では今回、医療用医薬品での承認を経ないまま市販薬(ダイレクトOTC)になる。

 リパーゼ阻害薬に関しては、実は2013年に製薬大手の武田薬品工業が医療用医薬品として肥満症治療薬「オブリーン」(一般名:セチリスタット)の国内承認を取得した。このとき、公的薬価を付けることが見送られた。

 公的保険を適用するには体重減少の効果が小さ過ぎたためだ。日本では販売されることなく、日の目を見ないまま姿を消した。

 大正製薬がアライをダイレクトOTCにしたのは、こうした過去に学んだというのもあるだろう。市販薬の市場は、医療用医薬品ほど効かない代わりに深刻な副作用が少ない薬にとっての主戦場であるからだ。

 肥満症治療薬として日本で存在するのは、1992年に承認された「サノレックス」(一般名:マジンドール)のみ。この薬は販売をやめている国もあり、かなり古いものだ。23年は約30年ぶりに肥満に向けた薬が登場することになる。しかも2剤である。

 生活習慣病の治療などで肥満の患者に日々向き合っている医師たちが目下、強い関心を寄せているのはアライではない。本命はもう一つの薬。ただこの薬、実は不名誉なレッテルを貼られている。

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