武田薬品工業、第一三共、アステラス製薬、エーザイ、塩野義製薬――。製薬5社におけるこの十余年の成果で軍配が上がるのはどこか。第一三共にあって武田薬品工業にないものとは何か。特集『選ばれるクスリ』(全36回)の#9では、製薬5社の大型品候補と次期社長レースの内情から、その実像を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
製薬6社に大型品候補七つ
軍配が挙がるのは?
クレディ・スイス証券のシニアアナリストである酒井文義氏は、国内製薬会社が手掛ける製品や開発品で大型化が期待されるものとして次の七つを挙げた。
・第一三共のがん治療薬「エンハーツ」
・中外製薬の血友病治療薬「ヘムライブラ」
・エーザイの認知症治療薬「レケンビ」
・塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ」
・第一三共のがん治療薬候補Dato-DXd
・アステラス製薬の更年期障害向け治療薬フェゾリネタント
・武田薬品工業のナルコレプシー治療薬候補TAK-861
ここに名前が挙がる6社のうち、外資資本の中外製薬を除く5社について、大型品候補と次期社長レースの動向を照らし合わせると、企業の実像が浮かび上がってくる。
製薬会社はこの十余年、「特許の崖(パテントクリフ)」に苦しんできた。2010年前後に大型品の特許切れラッシュが起きたからだ。稼ぎ頭の新薬の特許が切れると、売り上げが急落する。業績の低迷から抜け出す方法は、それに代わる大型新薬を生み出すことだが、これが容易ではない。多くの製薬会社はリストラを余儀なくされた。
最大手の武田薬品工業はドライなカルチャーに転じ、社長を筆頭に上層部を外国人、外部出身者にどんどん切り替えた。生産性の上がらない国内組織や人材はどんどんリストラした。
製薬会社が生き残るための一つの選択である。アステラス製薬も近い道を進み、次の社長は外から外国人を招くのではないかという説が出たりもした。
では十余年の成果はどこに軍配が上がったのか。
次ページでは、製薬5社について個社ごとに、大型品候補と次期社長レースの内情から、その実像を明らかにする。