JR上場4社と大手私鉄15社の第3四半期決算が出そろった。2022年度に入り、鉄道各社の経営は完全に持ち直しており、第3四半期累計(4~12月)では、第1四半期決算、第2四半期決算に引き続き、全社が営業利益、経常利益、純利益とも黒字となった。第3四半期累計の決算情報は各種媒体が解説しているので、本稿では鉄道各社の業績の回復状況を把握するため、直近の第3四半期(10~12月)の経常利益を中心に見ていきたい。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
JR東海とJR東日本で
異なる回復ペース
まずはJR4社からだ。JR東海の第3四半期の営業利益は約1344億円、経常利益約1182億円で、コロナ前(2019年度第1、第2、第3、2018年度第4四半期、以下同)と比較して60%超の水準まで回復している。
東海道新幹線の利益率は極めて高い。東海道新幹線輸送量(コロナ前比)と営業利益を四半期ごとに比較すると、第1四半期は67%で約835億円、第2四半期は67%で約884億円、第3四半期は79%で約1181億円だった。
東海道新幹線は2010年代に入って利用者が大きく増加し、2008年度から2018年度までの10年間で鉄道事業収入が2兆円以上、営業利益は約3620億円から約6670億円と倍近く増加した。つまり現状はピークより減少しつつも、10年前の水準をはるかに上回る利益を上げつつあることになる。
一方、JR東日本は営業利益約453億円、経常利益約479億円でコロナ前の40%程度だった。同社は昨年10月に発表した中間決算で、今年3月末時点の在来線定期外収入(関東圏)がコロナ前の95%、新幹線が90%程度まで回復するとの見通しを公表しているが、第3四半期時点で前者は89%、後者が80%だ。東海道・山陽新幹線と比較して東北新幹線、上越新幹線の回復が遅れていることが気にかかる。
JR西日本は営業利益約361億円、経常利益約321億円で、JR東海とJR東日本の中間にあたる50%強の水準だ。JR九州は営業利益約113億円、経常利益約117億円で、4社の中では最も高いコロナ前の70%超まで回復している。同社は鉄道と並ぶ柱である不動産・ホテル事業がコロナ前と変わらず好調なのに加え、運輸業の営業利益がコロナ前の半分近くまで回復したためだ。