新型コロナウイルス禍に円安、資源・原材料の高騰、半導体不足など、日本企業にいくつもの試練が今もなお襲いかかっている。その中で企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はスシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIES、くら寿司、カッパ・クリエイトの「すし」業界3社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
くら寿司が通期売上高「過去最高」も
最終利益は6割減
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のすし業界3社。対象期間は2022年8~12月の直近四半期(くら寿司は22年8~10月期、その他2社は22年10~12月期)としている。
各社の増収率は、以下の通りだった。
・FOOD & LIFE COMPANIES(スシロー)
増収率:マイナス5.0%(四半期の売上収益680億円)
・くら寿司
増収率:30.4%(四半期の売上高483億円)
・カッパ・クリエイト
増収率:0.3%(四半期の売上高178億円)
すし業界の3社では、くら寿司が3割超の大幅増収を達成した。同社は22年10月期の通期売上高が「過去最高」を更新するなど絶好調だ。
かっぱ寿司を運営するカッパ・クリエイトの増収率は1%未満にとどまったが、かろうじてプラスを死守した。
一方、FOOD & LIFE COMPANIES(スシロー)の増収率は20年9月期第3四半期(20年4~6月期)以来、2年半(10四半期)ぶりにマイナスに沈んだ。
なお、今回分析対象とした決算期は、スシローの店舗内で撮影された「迷惑客」の動画がネット上に拡散されるよりも前である。
迷惑動画が問題になる前のスシローの状況を整理しておくと、同社では22年6月に「おとり広告」の問題が発覚。消費者庁から景品表示法違反を指摘され、再発防止を命じる措置命令を下された。
また、カッパ・クリエイトでも、前社長の田邊公己氏が前勤務先の競合すしチェーン「はま寿司」から営業秘密を不正に持ち出したとして、22年9月30日に逮捕される事件があった。
そうした不祥事が、両者のイメージダウンにつながった可能性は否定できない。
だが、利益面に目を向けると、四半期増収率では「独り勝ち」だったくら寿司も大苦戦している。同社は22年10月期の通期決算で営業赤字を計上したほか、最終利益が前期比で約6割減に沈んだ。
さらに、スシローの営業利益も前年同期比で約7割減、最終利益は同じく約8割減となっている(23年9月期第1四半期決算)。カッパ・クリエイトの営業損益は13億円の赤字、最終損益は16億円の赤字だ(23年3月期第3四半期累計)。
すし業界を「減益ラッシュ」が襲っている状況だが、その背景には何があったのか。次ページ以降で、各社の増収要因と合わせて詳しく解説する。