退職時期を3年早めると
老後はさらに厳しくなる
ここまでの試算は、Vさんが考える中で最も遅い「10年後の退職」を前提に進めました。ただ、かなりストレスがたまる職場のようなので、Vさんは「もう少し退職時期を早められないのか」と不満に思うかもしれません。
そこで、Vさんがマイホーム購入後に働く期間を2年に減らしたケースも簡単に試算してみます。今から7年後、42歳で最初のリタイアを行う場合です。
筆者は本稿中盤で、マイホーム購入(住宅ローン契約)後の金融資産額は2125万円、年間黒字額は144万2000円になると試算しました。そのペースで2年間働くと、貯蓄に288万4000円が加わるため、今から7年後の金融資産額は2413万4000円です。
また、先ほどの試算と同じく、退職時に住宅ローンを一括返済することにします。筆者のシミュレーションでは、購入から2年後のローン残高は1425万5204円なので、一括返済後の金融資産額は987万8796円です(便宜上988万円とします)。
先ほどと同じく、退職後の3年間はゆっくり過ごし、生活費として300万円を金融資産から取り崩すと、残額は688万円です。
45歳になったVさんは、アルバイトとして労働を再開します。それ以降は年間100万円の収入を得られれば、688万円の金融資産額を維持したまま65歳を迎えられます。
ですが、この金融資産額は「今から10年後に退職した場合」の約半分であり、不測の事態に対応できない可能性があります。人生100年時代を考慮すれば、この金額ではやや心もとないと言わざるを得ません。
65歳以降もアルバイトで収入を得ることができれば「何とか安心」といえるかもしれませんが、かなりギリギリの状況です。
今回の試算では割愛しますが、現職を辞めるまでの期間が7年よりも短い場合は、老後の金融資産額はさらに減ります。少なくとも7年後までは現職を継続した方がよいと思われます。
もし気分が変わり、1度目の退職から3年間休んだ後に「正社員に戻ってもいい」と思えるならば、その選択はもちろん「あり」です。
また、先に述べましたが、今回は投資関連の収支は一切考慮していません。支出面の試算で対象外とした「毎月7万円の投資資金」を通常の貯蓄や生活費に回せば、家計はさらに安定するかと思われます。
もし投資で大幅な収益が得られたならば、試算より早めに退職することも可能でしょう。一方で、大幅な損失を出した場合は、退職や不動産購入を後回しにすべきなのは言うまでもありません。