プログラミング教育を
STEM・STEAM教育に取り込むことの弊害
懸念の1つは、情報科を専門に教えられる教師が少ないことです。新しい学習指導要領に基づいた研修や情報科教員の採用は進められてはいますが、そもそも教師全般の数も不足している中で、苦労されている学校は多いようです。
この教師不足を背景に、プログラミング教育を「STEM(科学・技術・工学・数学)教育」「STEAM(STEMに芸術を加えたもの)教育」の一環に入れ込んでしまうことに、私は一抹の不安を覚えています。
STEM教育、STEAM教育という丸め方をすること自体は悪くはありません。プログラミングではそもそも、「プログラミングで何を作るか」という問題の発見や、その問題に対する解決策を考えるさまざまな発想法、それを実際に使ってもらうための意匠をどうするかというクリエイティブの力も必要です。
ただ、プログラミングを専門とする教師が少ない今、多くの学校で他の科目の先生が情報科も学んで教えている実態があります。STEM・STEAMをうたうことで、教員が不得意なプログラミング分野ではなく、自身の得意分野の方へ持ち込んで教えてしまうことが起きえるのではないかと思うのです。
例えば中学校の技術科でプログラミングを教える際、「ロボットプログラミング」というかたちを取ることが多くあります。すると同じ技術科の中でも工作や電子回路など、プログラミングではない部分ばかりが手厚くなってしまう可能性があります。
民間のプログラミングスクールでも、同じような問題が考えられます。今、ちょっとしたプログラミングスクールだと、3Dプリンターやレーザーカッターなども備えられているので、そうした道具を使ったものづくりも可能です。
ロボットプログラミング自体は悪くはないのですが、限られた時間しかない中で複数のことを学ばなければならないときに、子どもたちも目に見えるロボットアームや電子回路を組み合わせるのは楽しいですから、そちらばかりをやってしまうという弊害が出てきてしまいます。