「小学校からのプログラミング教育」
に対する懸念

 とはいえ、前回も述べたように、簡単な作業がノーコード/ローコードやAIで置き換えられていることは事実です。ノーコードやローコード、AIではできない部分が、真のIT力(IT産業力)であり、それが国力につながります。今、人が作らなければいけないところをしっかり日本でも作れるようにしなければ、「輸入超過」状態がさらに加速していくことでしょう。

 結局はプログラミング力、実装力が大事なのです。高い報酬を払ってプログラマーを採用している海外と同じように、日本でもプログラミング力を高めていかなければなりません。

 そのための施策の1つとして、2020年から小学校でプログラミング教育が必修化されました。ただ、私は実は最初、小学校でのプログラミング教育には反対でした。

 私や私の部下だった人たち、あるいは今30代・40代のプログラマーは、小学校、中学校、さらには高校までプログラミングをしてこなかった人も多いのです。しかし大学に入って初めてプログラミングを始めたような人でも、グローバルでトップのIT企業にエンジニアとして入ることができています。では彼らは小学生の頃、どうしていたのか。「算数が面白い」などといって過ごしていたわけです。

 ですから小学校ではプログラミングに必要な算数や数学、あるいは論理的思考などの習得を目指すべきではないかと、私も当初は考えていました。また、プログラミングの授業が追加されることで、他の授業が減ってしまうことも危惧していました。

 さらに、教員でプログラミングがわかっている人が少ないということも心配でした。教員の方はそれでなくても今、大変多忙です。そんな中で、プログラミングをあまり好きでもない、得意でもない教員に教えられる子どもたちは、何となくそれを察してしまうのではないでしょうか。

 私が算数や数学、理科を好きになったのは、小中高でその魅力をとてもよく語ってくれる先生がいたからです。「文部科学省からやれと言われているから」というだけでプログラミングを教えている先生に、その魅力が伝えられるか。放っておけばスーパークリエイター、天才プログラマーになるような子が、小学校の頃からテスト勉強のようにプログラミングを学ばされたら、つまらなくなってしまうのではないかと思ったのです。

 実際に必修化が始まってみると、ちゃんと創意工夫してプログラミングの魅力を伝えている学校も多いことがわかり、私の心配は杞憂(きゆう)に終わったようです。今では私も、小学校でのプログラミング教育を応援しています。