子どもたちがビジュアル
プログラミングで学ぶことの功罪
また「ビジュアルプログラミングの功罪」も懸念すべき点です。
小学校だけでなく、中学校や高校の一部でも、子どもたちが使えるプログラミング言語として適当なものがあまりないことから、ビジュアルプログラミングを取り入れている現場は多いです。ただ、前回記事でも指摘したとおり、ビジュアルプログラミングには一長一短があります。
適材適所でビジュアルプログラミングを取り入れることはよいことです。しかしビジュアルプログラミングに、なまじ柔軟性があるために、本来テキストでプログラミングすべきところまでビジュアルプログラミングでできてしまう。すると子どもたちが、テキストプログラミングを学ぶ意欲を失ったり、学ぶ必要性を感じられなくなったりすることが起き得ます。
テキストプログラミングは最初は面倒なものです。テキストをキーボードでタイプしなければならないという時点で、ブロックを組み合わせるだけのビジュアルプログラミングと比べれば、とても面倒くさい。しかも、そのタイプの内容も自分で考えなければなりません。ビジュアルプログラミングなら、すでにあるブロックを組み合わせればいいだけです。
実際には、テキストプログラミングにも「ライブラリ」や「モジュール」と呼ばれるような部品が用意されているのですが、直感的にとっつきやすいものではありません。また学習という側面からは、簡単なことでも一から考えて作る方が習得しやすく適していることもあります。それがやはり、子どもからは「面倒くさい」と見られがちです。
本当は慣れてくれば、複雑なものを作ったり難易度の高いものを作ったりしようと思うと、テキストプログラミングの方が面倒ではありません。同じ処理を複数行うときに、ブロックをいちいち大量に並べる手間より、テキストをコピー・ペーストした方が断然早いですし、一部の処理だけ直すというときにもエディターで一気に置換することができるからです。
そう考えれば、テキストの方が効率性が高い部分も優位性がある部分も、たくさんあります。ビジュアルプログラミングばかりやっていると、それを学ぶ機会が失われてしまいます。
率直に言って私は、中学1年生ならともかく、高校生にもなって小学生が使うようなScratchのようなツールでプログラミングを学ぶというのは、本質的におかしいのではないかと思っています。