仕事の生産性を高め、売上や利益を効率良く高めていくために必要な「付加価値」は、いったいどうやってつくりだすのか。営業利益率50%超え、平均社員給与2000万円超えのキーエンスの元コンサルティングエンジニアが明かす、高収益な会社に変貌させる「最強スキル」とは――。本稿は『付加価値のつくりかた』(田尻望、かんき出版)を一部抜粋・編集したものです。
最小の資本と人で
最大の付加価値を上げる
キーエンスが経営上大切にしているのは、「最小の資本と人で、最大の付加価値を上げる」という考え方です。
この経営理念が具体的にどのようなことを意味するのか。わかりやすい例を挙げて説明します。
(1)売上5億円 利益1億円
(2)売上3億円 利益1億円
両方とも同じ「1億円」の利益を出しています。
ここでは利益=付加価値と考えてください。(1)(2)では、経営的にどちらがよいと思いますか?
売上で考えれば、(1)でしょう。
しかし「最小の資本と人で、最大の付加価値を上げる」というキーエンスの経営理念の下では、(2)がよいのです。
なぜなら、(2)のほうが「同じ利益を生み出すためにかかった資本と、工数・労働時間が少ない」からです。そのロジックを解説しましょう。
売上から利益を引くと、コスト(資本と人の命の時間)が算出されます。
(1)の場合、1億円の利益を出すためにかかったコストは5億円-1億円=4億円分です。しかし(2)の場合は、3億円-1億円=2億円分と、(1)の半分しかコストがかかっていません。
ここで、かかった資本は売上の50%だったとしましょう。すると、(1)では5億円÷2=2.5億円の資本がかかり、(2)では3億円÷2=1.5億円の資本がかかる計算になります(÷2は50%をかけています)。
次に工数・労働時間を考えましょう。時給2000円として計算してみます。
(1)の例では、5億-2.5億円-1億円=1.5億円が人件費です。人件費を時給で割ると実労働時間が算出されますから、1.5億円÷2000円=7.5万時間、かかっていることがわかります。
(2)では3億円-1.5億円-1億円=0.5億円が人件費です。同じように実労働時間を算出すると、0.5億円÷2000円=2.5万時間で済んでいるのです。